「ゴミ屋敷トラブルはよく耳にするけれど、他人事だ」と思っていませんか?現在、ゴミ屋敷は全国的に増えており、自宅や近所がゴミ屋敷化しないとは断言できません。まずはなぜ普通の家がゴミ屋敷化するのか、住民の心理や過程を考えてみましょう。

ゴミ屋敷はなぜできる?

いわゆる『ゴミ屋敷』をテレビなどで見たことがある人は多いでしょう。山積みになったゴミが家から溢れ出している様は衝撃さえ覚えます。

「あんな家そうそうあるものではない」と思っている人もいるかもしれませんが、近年はアパートやマンション内にゴミを溜め込む『隠れゴミ屋敷』も急増中です。こちらは表から見えないため発覚しにくいですが、部屋の中はいわゆるゴミ屋敷と同様の有様になっています。

普通の家や部屋がゴミ屋敷になってしまうのはなぜなのでしょうか。

物が増える

家がゴミ屋敷化する最大の原因は、物が増えすぎて手に負えなくなるからです。現代はインターネットの普及などにより、欲しい物は簡単に手に入ります。コンビニや100円ショップなど安くて手軽な店舗も充実しているので、その気になれば物はどんどん増えていくでしょう。

一方で、物を捨てるハードルは高くなっています。ゴミ出しの日は決まっていて分別が必要ですし、不燃物は気軽には出せません。処理場に持ち込もうにも、持ち込みには手間やお金が必要です。

物が入るばかりで出ていかなければ、家は物で埋め尽くされてしまうでしょう。

片付けが追いつかなくなる

物で溢れた家の片付けが追い付かず、ゴミ屋敷化するケースもあります。ゴミ屋敷の主が高齢者の場合、ゴミ屋敷化の原因は高齢であるが故かもしれません。

ゴミをまとめて分別したり、要らないものを外に出したりするのはかなりの体力を使います。ゴミが多ければ作業は長時間に及ぶため、最後まで片付けようという気力も必要になるでしょう。

ところが、高齢者には十分な体力・気力がありません。ゴミの山を見ただけで気持ちが挫け、片付けようとする気力がわいてこないのです。

不衛生化が進む

ゴミ屋敷の住人はゴミが増えるごとに感覚がマヒし、ゴミを許容できるようになります。端から見ると不衛生でとても暮らせない、と思う家も、住んでいる当人にしてみれば不衛生とも感じなくなるのです。

しかし実際は、溜まったゴミの下にダニや害虫が潜んでおり、衛生状態はよくありません。深刻な健康被害を受ける可能性もあり、ゴミ屋敷の衛生問題は深刻です。

ゴミ屋敷が近隣に与える悪影響

『ゴミ屋敷』が社会問題として度々取り上げられるのは、隣近所への悪影響が大きいからです。ゴミ屋敷が周囲に与えるリスクについて見てみましょう。

臭いや害虫の発生

ゴミ屋敷の最も深刻な被害が、悪臭や害虫の発生です。生ゴミまで大量に溜め込んでいるゴミ屋敷の場合、腐敗した生ものの悪臭は周辺一帯に漂います。このような状態では窓も開けられませんし、周辺を歩くのも憂鬱です。

また、腐敗した生ものを狙って、害虫も大量に発生します。害虫はどこにでも入り込みますから、ゴミ屋敷の周辺住民も、害虫トラブルに悩まされるようになるでしょう。

火災などのリスク

家じゅうゴミだらけの家で、ひとたび火災が発生すれば、あっという間に家が全焼します。家の外にダンボールや新聞紙を置いている場合は放火の危険もあるでしょう。

また、愛知県豊田市ではゴミ屋敷から火災が発生し、隣家まで延焼してしまいました。ゴミで溢れたゴミ屋敷は燃え方も激しく、火はゴミ屋敷だけにはとどまらないのです。

交通の妨げになる場合も

溢れるほどゴミの溜まったゴミ屋敷では、はみ出したゴミが道路を塞ぎ、他の人の通行を妨げる場合があります。

例えば、全国で初めて行政による強制撤去が行われた京都市のゴミ屋敷では、家の前に積みあがった古新聞や古雑誌が私道を塞ぎ、車いすさえ通れなくなっていたそうです。ゴミが自宅内で収まるうちはまだよしとしても、溢れたゴミが道を塞いだり交通の邪魔をしたりするようになれば、関係ない周囲の人は道を歩くのでさえ困難になります。

ゴミ屋敷住人への疑問

汚い、臭い、家が狭くなるなどゴミ屋敷はデメリットだらけに見えます。にもかかわらずゴミ屋敷に住み続ける人がいるのはなぜなのでしょうか。

なぜゴミ屋敷化してしまうのか、原因を考えてみましょう。

なぜ物を集めるのか

ゴミ屋敷になるほど物を集める人は、孤独な人が多いと言われます。社会的繋がりが薄いため、淋しい心を物で埋めようとしているのです。このタイプは物に囲まれていないと安心できないため、決して捨てようとはしません。せっせと物を集め溜め込むことで、満足して暮らせます。

また、ゴミ屋敷になるほど物を溜め込む人は、『ためこみ症候群』を発症しているのではと考えられます。ためこみ症候群を発症している人は物を持つことに快楽を感じるため、収集をやめられません。その人にとってはどんなゴミも財産であり、所持すべき理由があるのです。周囲がどんなに捨てろと言っても、本人にはその気が全くないため、ゴミ屋敷化は止まらないでしょう。

なぜ捨てないのか

ゴミ屋敷では物が増えていく一方で、減ることはありません。ゴミ屋敷の住民にとってゴミは『まだ使える』『勿体ない』など、意味のある物で、捨てる必要のない物と考えています。

このように考えるのは、貧しい時代を経験した高齢者や不自由な幼少期を体験した人に多くみられます。過去に満たされなかった思いを、物をキープすることで埋め合わせようとしているのかもしれません。

なぜ片付けようと思わないのか

物が多くても片付ければ少しは綺麗になるはずですが、ゴミ屋敷は片付けとも無縁です。片付けない原因は、次のような事が考えられます。

  • 時間がない
  • やる気がない
  • ゴミが多すぎて手に負えない
  • 精神的に無理

毎日仕事が忙しい人は、片付ける時間も気力もありません。家に帰っても寝るだけなら、片付いていようがいまいが関係ないのです。

また、やる気はあってもゴミの山を前にすると諦めてしまう人もいます。やらなければ、という考えがストレスになってしまうため、やる気はますます低下するでしょう。

片付けできない理由は人それぞれですが、ゴミ屋敷化するほど片付けられないのは、その人が精神的に大きなトラブルやストレスを抱えていると考えられます。

近隣にゴミ屋敷ができたらどうすればいい?

自分の家をいくら綺麗にしていても、近隣の家がゴミ屋敷化すれば、被害を受けます。もしも近所の家がゴミ屋敷になった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

行政へ助けを求める

ゴミ屋敷トラブルは話し合いでの解決が難しく、住民同士でのやり取りには限界があります。なるべく早くトラブルを解決したいなら、まずは行政や警察へ助けを求めましょう。

現在の法律では、たとえゴミでも他人の敷地内にある物は勝手に処分できません。しかし近年、独自の条例でゴミ屋敷に対処する自治体も出てきました。

例えば、東京都の足立区では『足立区生活環境の保全に関する条例(通称:ゴミ屋敷条例)』が施行されており、区が指導・勧告した後、正当な理由なく命令に従わなかった場合は、区が代執行できると定めています。

このような条例を制定している地域はまだ限られていますが、足立区をロールモデルにゴミ屋敷に対処している自治体も増えています。ゴミ屋敷に関するトラブルが発生した場合は1人で悩まずに、速やかに行政に相談しましょう。

万一に備えて火災保険へ入っておく

ゴミ屋敷が近くにある人は、ゴミ屋敷で火災が発生した場合を想定して、火災保険に加入しておくことをおすすめします。前述のとおり、ゴミ屋敷で火災が発生すれば、火はアッという間に燃え広がり、近隣の家も無傷では済まないでしょう。

被害を受けたとしてもゴミ屋敷の主がきちんと賠償してくれればまだよいですが、おそらくそれは期待できないでしょう。

ゴミ屋敷は、ちょっとした不始末で火が発生することが考えられるうえ、放火の心配もあります。実際にゴミ屋敷火災の延焼で家を失ったという事例もありますので、とりあえず火災保険だけは掛けておいてはいかがでしょうか。

まとめ

ゴミ屋敷が社会問題として取り上げられる現在、誰の家もゴミ屋敷化する危険を持っています。不要な物や壊れた物は潔く処分し、物を溜め込まないように注意しましょう。

また、近所の家がゴミ屋敷化する可能性もあります。悪臭や害虫被害に悩む前に、速やかに行政に相談することをおすすめします。