皆さんは、「ゴミ屋敷」と聞いてどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

近年、ゴミ屋敷問題はワイドショーをはじめ、マスコミでも多く取り上げられており、社会問題となっています。

家がゴミ屋敷になってしまう原因は、どのようなものがあるのでしょうか。

この記事では、ゴミ屋敷はどんな状態を言うのか?ゴミ屋敷になってしまう原因は何なのか?

また、ゴミ屋敷にならないための予防策についてもご説明してきます。

ゴミ屋敷の状態とは?

ゴミ屋敷とは、「色々なゴミが混在して、積み重なっている状態」です。

その状態のレベルは、部屋いっぱいだったり、外までゴミが溢れ出ていたりと様々です。

ゴミ屋敷に積み重なっているゴミの種類で一番多いのは、弁当の殻や腐った食べ物のゴミのような可燃ゴミ。

その他にも

  • 空き缶、空き瓶
  • せともの
  • 衣類
  • 古い雑誌

などなど、様々なゴミが混在しているのが特徴です。

ゴミ屋敷を作ってしまう人は、「これは何かの役に立つ」と、ゴミをゴミだという認識をしていないケースが多いと言われます。

また、台所やトイレなどの水回りがカビだらけで不衛生、汚れが化石化しているのも特徴のひとつです。

このような状態になるのはさまざまな原因がありますが、精神的疾患がある人、多忙で時間がない人、体力的に片付けが億劫になってしまった老人の方などに多く見られます。

ゴミ屋敷の原因となる病気

ゴミ屋敷となる原因は色々ありますが、近年の調査や研究では、精神的な疾患が原因であることが多いと言われています。

ゴミ屋敷の原因となる可能性が高い、主な病気(精神疾患)を取り上げてみました。

ADHD(注意欠陥多動性障害)

ADHDとは、注意欠陥多動性障害のことで、

  • 集中力がない
  • 気が散る
  • 落ち着きがない
  • 考える前に行動してしまう

というような特徴がみられます。

もともと、注意力や落ち着きがない子どもの障害と言われていましたが、近年では、大人にもADHDがあることが分かり、注目されています。

部屋の片付けをするには、ある程度の集中力が必要です。

ADHDがゴミ屋敷の原因となる理由は、集中力を長い間保つことができない、気が散ってしまう、というようなADHDの症状に起因しているようです。

買い物依存症

同じような物を持っているのにまた買ってしまう、自分に必要のないものを多数買ってしまう、という症状の精神疾患を「買い物依存症」と言います。

買い物依存症の人は、「買い物をする」という行為自体に執着しているので、平常心を失ったまま物を買い続けます。

買い物の対象はブランド物などの高級品のバッグから、100円均一のお店の商品など人により様々です。

物を購入しても、処分がなかなかできないので、買い物をする度に部屋が狭くなり、最後はゴミ屋敷になっていくのです。

この症状が原因のゴミ屋敷は、実際は「ゴミ」というよりも「倉庫」の状態に近いものになるでしょう。

価値のあるものや、未使用で十分に使えるものが、部屋中に積み重なっているということになります。

ためこみ症

「ためこみ症」は、その名の通り、物を捨てきれずにため込んでしまう病気です。

これは、2013年にアメリカ精神医学会の診断マニュアル「DSM-5」の中に新たに分類され、正式な精神疾患として認められています。

ためこみ症は、

・実際には価値がないのにもかかわらず、所有物を処分する行為を苦痛に感じ、捨てることができない。

・生活する空間が物で埋め尽くされていて、その部屋を本来の目的に使うことができない。

というような症状です。

捨てきれずにためこまれた物は整理整頓することなく、積み重なってゴミ屋敷化していくのです。

ためこみ症についてさらに詳細を知りたい方は、下記PDFの解説をご覧ください。

ためこみ障害の脳神経基盤-山口大学大学院准教授の松尾幸治氏

総合失調症

統合失調症は、思考や行動、感情を統合して行う能力が低下するものです。

症状としては、幻聴や妄想、会話にまとまりがない、などが見られ、100人に1人ほどがかかると言われる病気です。

総合失調症がゴミ屋敷の原因になるのは、幻聴や妄想に加えて「物をためこむ」「物を集める」という症状があるからです。

その結果、自分の家以外のゴミも自宅に持ち帰って溜めていく、という行動が定着して、ゴミ屋敷となってしまうのです。

認知症

認知症と聞いたら、「物忘れがひどい」「徘徊する」といった症状を思い浮かべる人が多いでしょう。

初期症状では物忘れから始まり、次第に「理解力や判断力の低下」「集中力や作業能力の低下」「周りの人が誰なのか分からなくなる」という症状も出てくるため、正常な日常生活を送ることが困難になってしまいます。

ゴミ屋敷の原因となる主な症状としては、「ゴミ回収日が分からなくなる」「物の収集癖が出てくる」「同じものを何度も買ってくる」などがあります。

同居する家族がいる場合は掃除や片付けができますが、一人暮らしの場合はゴミ屋敷になる可能性が高くなります。

セルフネグレクト

セルフネグレクトとは、「自己放任」になってしまうこと。

すなわち、自分自身の心や体のケアを放棄してしまうことです。

具体的に言うと、

・入浴が面倒になる
・着替えるのが面倒になる
・料理や食器洗いが面倒になる
・ゴミ捨てが面倒になる
・掃除や片付けが面倒になる

といった、正常な日常生活がまともに送れなくなってしまうのです。

セルフネグレクトは、社会生活や人付き合いに疲れた若者から一人暮らしの高齢者に多く見られます。

重症になると、今の状況を改善しようと考えるのも億劫になり、「もうこのままでいい」という気持ちになってしまいます。

その結果、家がゴミ屋敷になったり、不衛生な環境が原因で身体的な病気を引き落としたりするのです。

うつ病

うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが重なり、精神的なエネルギーが低下して、脳の機能障害が起きている状態を言います。

うつ病は現代病とも言われ、その患者数は年々増え続けています。

症状は、軽症~重症まで人によってさまざまですが、次のような特徴があります。

・物事への見方がすべて拒否的になる
・いつも悲しい気分、憂うつな気分である
・沈んだ気分で何事にも興味がわかない
・疲れやすく、元気がない(だるい)
・億劫で何もする気がしない
・睡眠障害を起こす
・人との交流を避けるようになる
・仕事・家事・勉強などの能力が低下する

家が散らかっていても、片付けや掃除をする意欲がなくなり、次第にゴミ屋敷化するケースも多いのです。

ゴミ屋敷を作りやすい人の特徴

前項で取り上げたような精神的疾患がなくても、ゴミ屋敷になってしまうことはもちろんあり得ます。

ゴミ屋敷は1日や短期間でなるわけではなく、最初はほんの少しだったゴミがだんだんと増えていき、次第に部屋一杯になって、やがて手を付けられないほど部屋や家から溢れ出てしまうのです。

それでは、ゴミ屋敷を作りやすい人には、どういった特徴があるのでしょうか。

片付けの経験が無く苦手意識があるタイプ

人は、苦手なことを後回しにする傾向があります。

片付けに対して苦手意識がある人は、部屋にゴミが散らかっていたり、ホコリが目についたとしても、片付けや掃除を後回しにしてしまいます。

それを繰り返した結果、気づいたら部屋がゴミ屋敷になっていた。というケースも少なくありません。

そうなってしまう前に、「片付け=苦手」という意識を思いきって捨てることが大切ですね。

毎日忙しくて片付ける時間がないタイプ

片付けやゴミ出しをする時間がない、という理由でゴミ屋敷になってしまうケースもあります。

仕事の就労時間が不規則で、ゴミ回収日に出し損ねたゴミ袋がいくつも溜まっている。

仕事が忙しすぎて、休日がほとんどなく、休めたとしても疲れ果てて片付けをする余力がない。

こういった理由で、どんどん部屋がゴミ屋敷になってしまうこともあります。

どうしても片付ける時間がないと分かっているのであれば、片付けの専門業者に依頼してゴミ屋敷になる前に解決することをオススメします。

また、ゴミが捨てれないほどの過酷な労働時間なら、ゴミ屋敷防止だけでなく、過労防止のためにも一度労働状況を見直してみることも大切です。

高齢化もゴミ屋敷の原因

引用元-高齢化の現状と全体像-内閣府

日本の高齢化率は、年々増加しています。

2017年には高齢化率が27.7%となり、約3人に1人が高齢者となっています。

とくに、一人暮らしの高齢者の家はゴミ屋敷になりやすいので注意が必要です。

高齢になると、気力の低下・記憶力の低下・足腰の筋力の低下、などで掃除や片付けができなくなってしまいます。

記憶力が低下すると、同じものをまた買ってしまい物が増えていったり、ゴミ回収日を忘れてしまい、どんどん溜まっていきます。

また、足腰が弱ると、重いものが持てなかったり、かがむのがつらくなり、片付けやゴミ出しがつい億劫になってしまいます。

片付けや掃除、ゴミ出しなど、今までは当たり前にできていたことが、高齢になるとかなり頑張らないとできなくなります。

気力の低下に伴って、それらを放置しがちになり、だんだんと家がゴミ屋敷になってしまうのです。

ゴミ屋敷は火事の原因になる

ゴミ屋敷に積み重なったゴミは、引火性の物が多くタバコなどで火が付いてしまうと、あっという間に燃え広がる危険性があります。

ゴミ屋敷の火事で一番怖いのは、近隣住宅へ延焼し住民が亡くなってしまうことです。

自分の家だけが焼けるだけならまだしも、他人の家まで燃やしてしまい、さらに人的被害まで出してしまったら大きな2次的被害が発生してしまいます。

実際にあるゴミ屋敷の火災例を見て、未然に防ぎましょう。

火事の原因については下記の資料を参考にしています。

平成29年(1月~12月)における火災の状況-総務省

〇発火を誘発するゴミによる火災

ゴミ屋敷のゴミは、通常分別されずに積み重なっています。

ゴミの中で発火の恐れがあるものは、お菓子など食品に同梱されている乾燥材、ヘアスプレーなどのガスを含んだスプレー類などです。

石灰を用いた乾燥材は、生ゴミや何らかの水分、油分がある物と一緒に放置すると、自然発火する恐れがあります。

ゴミ屋敷状態になってしまうと、このような危険を伴うゴミがどこに紛れているか分からなくなっているので恐ろしいのです。

〇タバコの火の不始末による火災

火災の原因で第1位は、タバコの不始末が原因の火災です。

その家の住人によるタバコの不始末以外にも、歩きタバコのポイ捨てによって火災が起きることもあります。

外まで溢れたゴミの山にポイ捨てされてしまったら、みるみるうちに火が燃え広がってしまうので恐ろしいですね。

〇放火による火災

タバコに次いで火災の原因で第2位が「放火」です。

放火の犯人は、計画性をもって実行する人、日常のイライラ発散のために放火する人、などさまざまです。

ゴミ屋敷は家の外にまでゴミが溢れていることが多く、放火犯に「燃えやすい家」だと認識され、放火の対象になりやすい傾向があります。

〇トラッキング火災

トラッキング火災とは、コンセントの差し込み口にホコリが積もり、そのホコリに火が付いて火事になってしまうことです。

ゴミ屋敷ともなれば、ゴミに埋もれてコンセントなんか見えない状態です。

ホコリだけではなく、コンセントの周辺に燃えやすいゴミが密着している可能性もあります。

これは、ゴミ屋敷に限らず、部屋の隅の掃除を怠ってホコリが溜まっていないか、時々注意しておきましょう。

高齢の親が住む実家はゴミ屋敷になりやすい

「久しぶりに帰省したら実家がゴミ屋敷になっていた!」

というのも他人事ではありません。

高齢化がゴミ屋敷の原因になりやすいことは前述しましたが、身内との付き合い方も大いに関係しています。

高齢者は、身体的な衰えのほか、「寂しい」という気持ちから、認知症になったり気力が減退することが多いと言われます。

さらに、寂しくなると収集癖がついてしまい、ゴミを集めるようになり、繰り返すうちにみるみる家がゴミ屋敷になってしまうのです。

離れて住んでいるからといって、放ったらかしていては危険です。

身内が普段から気を配って、実家がゴミ屋敷にならないための予防策を考える必要があるでしょう。

実家をゴミ屋敷にしない方法

高齢の親が住む実家をゴミ屋敷にしないためには、意識的にコミュニケーションをとることが大切です。

実家のゴミ回収日を把握しておき、その日に電話をかけてあげるのもいい方法です。

もし、親が自分で片付けができない状況でも、頻繁にコミュニケーションを取っていたら、子供に頼りやすくなりますよね?

頻繁に連絡を入れることで、実家がゴミ屋敷になってしまう前の段階で異常に気付くことができます。

できれば、可能な限り定期的に実家に帰り、親の身体的状態、精神的状態や家のゴミや物の状態を確認することをおすすめします。

ゴミ屋敷になってしまった場合の片付け方

もしも実家がゴミ屋敷になってしまったら、どう対処すればよいのでしょうか。

その方法としては、若い世代の身内で片付けるか、プロの業者に依頼するか、どちらかしかありません。

ゴミ屋敷の片付け方の準備やポイントについては、下記の記事で詳しくまとめていますのでご覧ください。

ゴミ屋敷の片付け方で重要なのは?準備や片付けのポイントまとめ

ゴミ屋敷の原因まとめ

ゴミ屋敷は、深刻な社会問題です。

ゴミ屋敷になる原因は、単に「だらしない」というわけではなく、さまざまな精神的疾患や高齢化によるものが大半を占めています。

高齢化が進むとともに、ますます深刻化してと予想されます。

ゴミ屋敷は、不衛生で見苦しいだけではなく、火災の危険性も高いことがお分かりいただけたと思います。

もしも知らないうちに家がゴミ屋敷になってしまった時は、自分だけで悩まずに片付け業者へ相談するなどして、早急に解決することが大切です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。