気がついたらゴミを溜め込んでしまいゴミ屋敷になっている、もしくは近親者が亡くなりゴミが溜まった家を片付けなくてはいけない、ということもあるかもしれません。ゴミ屋敷を片付けるためのノウハウを知り、清潔で健康的な生活を送る環境を整えましょう。

ゴミ屋敷の問題点

ゴミ屋敷とはその名の通り、『家が足の踏み場もないほどのゴミで埋め尽くされている状態』を指します。ゴミ屋敷は、住んでいる人はもちろん、周りの人にも悪い影響を及ぼすことがあります。そのため、放置してしまうとより多くのトラブルに繋がりかねません。

まずは、ゴミ屋敷の問題点について知っておきましょう。

近隣住民への迷惑

ゴミ屋敷が社会問題として注目され、『ゴミ屋敷』という言葉が世に定着するようになったのは、近隣住民に大きな迷惑をかけていたためです。悪臭や害虫の発生、火災が起きやすかったり、場合によっては倒壊の危機があったりと、ゴミ屋敷があると近隣住民は気が気ではありません。

そのため、周りの人への影響も踏まえ、行政ではゴミ屋敷の家主に対しては清掃するように指導するようになったのです。

周囲からの孤立と悪循環

ゴミ屋敷に住んでいる人の多くは一人暮らしであり、さらに高齢の人の比率が高い傾向にあります。高齢の人の場合、身体的に掃除が大変になったり、精神的に掃除が面倒になったりして、ゴミが増えてしまうのです。

また、近くに頼れる人がおらず孤立していると、困ったときに相談したり助けてもらったりするのも難しくなり、問題解決の機会を逃してしまいます。異変に気づいて他の人が手助けをしようと思っても、ゴミが増えてしまった家を見せたくないがために拒否し、さらに孤立してしまう、という悪循環に陥ることも指摘されています。

つまり、一度ゴミ屋敷になってしまうと、そこから脱却するのは難しいのです。

健康を損なう

また、ゴミ屋敷は家主や近隣住民の健康を損なう可能性があります。埃やカビによってアレルギーを発症したり、腐った食べ物との接触で病気になったりする可能性もあります。特に家主は、呼吸器系や皮膚系の病気を患ってしまう危険性が高まります。

衛生面が損なわれると、健康を損なうリスクが上がってしまうので、そういう意味でもゴミ屋敷は解決していくべきです。さらに、発生した害虫や害獣による感染症の危険があることも考慮すべきでしょう。

片付けられない要因

普段自分で片付けができる人からすれば、「ゴミ屋敷なんて片付ければいい」と思うかもしれません。しかし、ゴミ屋敷になる原因は、単純に居住者が怠慢で掃除をしないというだけではないのです。

片付けられない原因を特定することは、ゴミ屋敷の状況を改善するために大切な要素となります。片付けられない理由を明らかにして、対策していきましょう。

モノが多すぎる

片付けられない理由として挙げられるのがまず、物が多すぎるということです。多少物が多くとも順番に片付けていけば、たいていの場合は片付けられるのです。しかし、あまりに物が多いと、収拾がつかずに放置するしかなくなってしまうこともあります。

また、「どこから手をつけていいかわからない」「片付けても片付けても状況が良くならない」という気持ちから、片付けを放棄してゴミ屋敷になってしまうケースも指摘されています。

モノが捨てられない

ゴミ屋敷になる理由のひとつが、物が捨てられず溜め込んでしまうことです。もともと物を捨てるのが苦手だったり、物を大切にとっておく習慣があったりする人は、いざなにかを捨てようと思っても、なかなか実行することができません。

ただ愛着があるというだけではなく、「いつか使うかもしれない」「捨てたら自分が困るのではないか」と思って捨てられない人もいます。そういうタイプの人は、ひとりで片付けるのが困難で、物を溜め込んでしまいます。

病気で片付けられない場合も

さらに、病気のせいで片付けられないのかもしれません。例えば、高齢の方であれば、認知症のせいで収拾癖という症状が起こったり、自分や周りの環境について無関心になったりします。

他にも注意欠如多動性障害、いわゆるADHDという病気の症状で物の整理が苦手という可能性も考えなくてはいけません。また、鍵を閉めても不安になって何度も確認したり、何度も手を洗ったりする強迫性障害という症状の一つとして、『ゴミを捨てることができない』という人もいます。

病気だと自覚して周りから適切なサポートが受けられれば、病状が改善して住環境を良くできるでしょう。しかしそうでない場合、自分を責め、周囲から孤立していき、ゴミ屋敷になってしまう可能性があります。

片付ける前の準備

ゴミ屋敷を片付けるのは、かなりの重労働です。しかし、片付けることによって心身ともに健康に近づけることができるので、無理のない範囲でがんばっていきましょう。

ゴミ屋敷の片付けを成功させるためには、しっかりと事前に準備しておく必要があります。より効率的に片付けていくために、準備のポイントを押えましょう。

個人で片付けられる範囲か確認する

最初に、自分個人だけで片付けられる範囲なのかを確認してください。水道や電気が通っていて、ゴミがいくつかの部屋にだけ留まっていることなどが判断基準になります。

もし一軒家で部屋がいくつもあり、その全てがゴミで埋まっている、さらにベランダや庭もゴミが山積みになっているうえ水道が使えない…という状況であれば、個人で対応するのは難しいものです。その場合、業者に頼むという手段を検討してみましょう。

道具を準備する

清掃をすると決めたら、必要な道具を準備してください。まずは基本となるマスク、軍手、そして動きやすい服もしくはエプロンなど、病気になったり怪我をしてしまったりすることを防ぐ道具をそろえます。

さらに、何種類かの殺虫剤、特にゴキブリやハエに対するものを用意しましょう。ほかにも、モップや雑巾、バケツ、大量のゴミ袋など、基本的な掃除用具を準備します。

ゴミの回収日と回収方法を確認する

ゴミ屋敷を片付ける際、大量のゴミが出ます。片付け始めてから「どこにどう捨てればいいのだろう」と悩むと片付けがうまく進まず、ゴミ屋敷の状態は改善しません。

片付ける前に、ゴミの回収日や回収方法をしっかりとチェックして、『燃えないゴミをどこにどうやってまとめるのか』『燃えるゴミは何色のゴミ袋に入れるべきなのか』などを整理しておきます。そうすることによって、実際に掃除し始めたときに、スムーズにゴミを捨てることができ、作業効率が上がります。

仕分けやスケジュール

最初から全てやろうと思っても、なかなかうまくいかず挫折してしまうこともあるかもしれません。ゴミ屋敷の清掃は、無理のない範囲で計画的に進めていくことが大切です。

そのために、どういう順番でどこからどう片付けるのかというスケジュール管理、そして何を優先して何も後回しにするのか、という仕分け作業が必須です。

自分のペースで片付けていくために、ストレスのない計画を立てましょう。掃除する際は、『使うもの』『使わないもの』『保留』の三つに仕分けていきます。そのとき、いつどんな時に使うのか即答できないものは、すべて『使わない物』に入れていきましょう。できるだけ保留にせず、決断を後回しにしないことがポイントです。

片付け方のポイント

実際に片付けをしていくときは、より効率よく進めて行きたいものですよね。ゴミ屋敷は片付けの順番や方法を間違えるといつまでたってもゴミが減らないうえ、心身ともにとてもストレスになってしまいます。

準備をしっかりとしたあとは、効率がいい片付け方のポイントもちゃんとと押さえておきましょう。片付ける方法を知っておくだけで、作業効率がグッと上がります。

玄関や床からスタート

片付けるときは、まず『玄関』から掃除するのがおすすめです。玄関が綺麗になれば多くのゴミを出すときも出しやすくなるうえ、換気もしやすくなるからです。

玄関のゴミがある程度減ったら、『廊下の床』を掃除していきましょう。床が見えると「片付いた」という達成感が得られますし、動線を確保することによってその後の清掃がスムーズに進めることができます。

あちこち手をつけない

いたるところにゴミがあると、どこから手をつけていいのかわからず、とりあえず目に付いたゴミ後処理しようと思ってしまうかもしれません。

しかし、あちこち手をつけてしまうと、どこも中途半端になって時間がかかるうえ達成感を感じられなくなってしまいます。いろんな場所を同時に片づけようとせず、『玄関から廊下、部屋』と順番に片付けていくことが大切です。

また、ゴミ屋敷の清掃のポイントはまず『ゴミを減らすこと』であり、整理整頓ではありません。そのため、引き出しや扉はできるだけ開けず、床の上に積み上げられているゴミから処理していきましょう。生理整頓は、とりあえず後回しです。

仕分けの判断に困ったら後回し

作業を進めていくと、「捨てるべきなのか分からない」もしくは「どうやって捨てればいいのかわからない」というようなものを目にするかもしれません。そんなときはひとまずどこかに固めて置いておいて、判断を後回しにしてしまいましょう。

ゴミ屋敷の清掃では『どんどん捨てることが重要』なので、判断に時間がかかるものは考えないようにしたほうが無難です。また、片付けに慣れた後に仕分ければ、判断が早くなり効率的に捨てられるというメリットもあります。

不用品について

ゴミ屋敷の掃除をしていると、多くの不用品が出てきます。必要ではないものをそのまま放置してしまうと、また同じくゴミ屋敷に戻ってしまいかねません。不要だと判断したものは、適切な方法で迅速に捨てていきましょう。ただしそのときは、捨てる方法に気を付ける必要があります。

家電リサイクル法に注意

一般家庭から排出される家庭廃棄物のなかでも、一部の粗大ごみを捨てるときは、『家電リサイクル法』に注意を払わなくてはいけません。冷蔵庫やテレビ、洗濯機、パソコンといった家電製品がそれに当たります。

ほとんどの自治体ではそういったルールをオンラインで公開しているので、一度調べてみましょう。

買取や回収業者を利用しよう

まだ使える物を捨てるのは、あまり気持ちのいいものではないですよね。そんなときは、買い取りや不用品回収業者のサービスを利用するのがおすすめです。特に、家具や家電は買い取ってもらえることが多いので、積極的にサービスを利用しましょう。

しかし、あまりに傷んでいたり壊れていたりすると買い取ってもらえないので注意してください。また、回収業者を呼ぶときは、どの程度お金がかかるのかを事前に見積もってもらうと安心です。

業者に頼む方法も

自分で挑戦してみたけどうまく清掃できなかった、個人では解決しきれなかったというときは、思い切って業者に頼んでみましょう。

お金はかかりますが、そのぶん個人でやるよりも高い成果を期待することができます。

挫折した場合や一人で難しい場合はおすすめ

ゴミ屋敷に人を招いて掃除してもらうというのは、心理的に抵抗があるかもしれません。しかし業者のスタッフは、その道のプロです。多くのケースを経験していますし、どのように片付けるのが効率的なのかも知っています。

遠慮せずに、まずは気軽に相談してみましょう。業者を呼べば一人でやるよりもはるかに早く進みますし、プロが来てくれるので状態はほぼ確実に改善します。

何度かゴミ屋敷の掃除を試したものの挫折したことがある人、心身の都合などで一人で解決するのがむずかしい人は、ぜひ試してみましょう。

業者選びの注意点

業種を選ぶ時に大切なのは、その業者が悪質でないかどうかを見極めることです。例えば、『一般廃棄物収集運搬業』という許可証を持っているのかどうか、個人情報の扱いや損害賠償の対応はどうなっているのかなどが、見極めるチェックポイントになります。

芸能人の引っ越しをばらしてしまったアルバイトがニュースになったのと同じように、うっかり個人情報をインターネットなどに公開されてしまったら困りますよね。そうならないように、個人情報の扱いについては確認しておきましょう。

また、トラブルで何かを壊してしまったり、大切なものを捨てられたりしたときに、損害賠償の話になる可能性があります。そのときになって慌てないように、損害賠償についての話もしてくれる業者を選びましょう。

見積もりは複数とろう

いくつか業者の目処を立てたら、費用の見積もりもしてもらいます。そのときはいくつかの業者にお願いして、比較検討をすることがおすすめです。

ゴミ屋敷の規模やゴミの量によっては、想定よりも多くのお金がかかってしまうかもしれません。そのため、できれば足を運んで実際に家の状況を確かめてもらい、より確実な見積もりを取ってもらうと安心です。

その際、スタッフがどんな対応をしてくれるのか、どんな説明をしてくれるのかというところもチェックしておきます。

主な業者と特徴

いざ業者に頼もうと思っても、普段そういったサービスとの関わりがなく、どんな業者にお願いすればいいのかわからないという人も多いかもしれません。そんなときは、以下でおすすめするサービスをまず見てみて、自分にはどんな業者が合っているのかを考えてみてください。

ゴミ屋敷業者

一番にチェックしておきたいのが、ゴミ屋敷業者です。多くのゴミ屋敷を見てきているので対応に慣れているうえ、ゴミを捨てるノウハウを持っています。大量のゴミがある場合、とても頼りになります。

しかし、ゴミ屋敷業者は基本的に捨てることをメインにしており、不用品回収業者という側面もあります。そのため、細かな指示や整理整頓の協力などはあまり期待できません。ゴミ屋敷業者への依頼は、「とにかくまずゴミを捨てなければ」という人に向いています。

家事代行

ゴミ自体の量はそれほど多くないものの、水回りが汚れている、洗い物も溜め込んでしまっているというような場合は、家事代行にお願いしてみましょう。家事代行は比較的リーズナブルにお願いでき、家事に含まれることなら柔軟に対応してもらえるところが魅力です。

その一方で、清掃業者ではないので、ゴミ屋敷の掃除は拒否されるかもしれません。事前に連絡をして受けてもらえるかどうか確認する方が無難です。また、家事代行はその名の通り家事を代行するものであって、スタッフが積極的に何かをしてくれるわけではないので注意してください。

片付けコンサルタント

ある程度片付いたものの、そこからどうしていいのかわからないという人は、片付けコンサルタントに整理整頓の方法を教えてもらうのもおすすめです。片付けコンサルタントは、その人のライフスタイルや家の間取り、家具の種類などを踏まえて、どうやったら効率的に片付けられるかを提案してくれます。

しかし、実践するのはあくまで自分であることを忘れてはいけません。また、もし病気で片付けられないので、あればその病気に理解のある片付けコンサルタントにお願いする必要があります。

まとめ

より良い住環境を手に入れることは、快適な生活を送るうえで大切になります。少し部屋が散らかっているだけなら頑張って片付ければどうにかなりますが、ゴミ屋敷になってしまうと、解決が難しい可能性があります。

そんなときは、適切な片付け方法を知り、場合によっては業者に頼むことで、ゴミ屋敷を確実にきれいにしていきましょう。