故人の所有物を家族に代わり整理する『遺品整理業者』のニーズが高まっています。なぜ遺品整理業者が必要とされているのか、具体的な業務内容を詳しく見ていきましょう。よい業者の見分け方や注意点についても解説しています。

個人で遺品整理は難しい?

葬儀が終わり、一段落した後に待っている作業が『遺品整理』です。

「故人との思い出に浸りながら家族で整理する」のが理想ですが、全て個人で行うには手間がかかるという話はよく聞きます。遺品整理がどのようなものなのか見ていきましょう。

遺品整理とはどういうもの?

『遺品整理』とは、故人が残した品全般を整理することです。遺品には、生活雑貨、衣類、貴金属、家電、預金通帳、印鑑などのさまざまなものが含まれます。

家族や親戚同士で話し合い、形見分けするのか、処分するのかを決め、最終的には部屋を綺麗に清掃して、原状復帰させるところまでをいいます。

故人がもともと家族と同居している場合の遺品整理は、時間をかけてゆっくりと行うことができますが、アパートやマンションで1人暮らしをしていた場合は、早急な対応が必要です。

「故人がゴミをため込み異臭を放っていた」または「床などに汚れが広がっていた」などの場合は、それらのクリーニングも含めた片付けをしなければなりません。

仕分けの手間がかかる

遺品整理の第1ステップは、『残しておくもの』と『処分するもの』をはっきりと仕分けることです。しかし、遺品に故人の思いが詰まっていると、なかなか簡単には処分できないでしょう。

また、故人の遺品は『相続財産』となりますので、「これは捨てていいだろう」と勝手に処分すると、「形見分けして欲しかったのに…」と、後で思わぬトラブルを生むことになります。

有価証券、不動産も遺品に含まれますので、価値のある動産をリストアップするだけでもかなりの時間がかかるでしょう。

大型家電や家具などの重いものから、貴金属や写真などの細々としたものまであり、遺品整理には『時間、体力、気力』を要します。

期限や捨て方などルールがある

遺品を『不用品』として廃棄するときは、各自治体のルールに従って『分別』を行う必要があります。大きなものは粗大ごみの扱いになるため、有料の申込制になっている自治体も多いです。

遺品整理は、故人のこれまでの歴史を一気に整理することになるので、分別や捨て方に迷うものが多々出てくるでしょう。また、『仏壇』は『魂抜き法要』をする宗教上のしきたりがあります。初めて遺品整理をする人にとっては分からないことだらけかもしれませんね。

賃貸物件は、ほとんどが月末締めの賃貸契約です。新たに家賃が発生する前に片付けることを考えると、のんびりはしていられないでしょう。こうした期限などを考慮しながらテキパキと進める必要があります。

遺品整理業者を使うことを検討しよう

遺品整理になんらかの期限がある場合、仕分けや分別に時間を割けない場合は、『遺品整理業者』を使う方法があります。片付けの負担を大幅に減らせるため、利用する人は年々増えています。

遺品整理業者とは

『遺品整理業者』とは、家族や親族などに代わって遺品整理を代行してくれる業者です。『買取り・寄付・処分』に仕分けし、通帳や貴金属などが見つかった場合は、依頼主に渡します。

遺品整理業者は仕分けをするだけではありません。故人が所有していたインターネットアカウントの廃止や電気・水道・ガスなどの各種手続き、お寺での魂抜き法要など、あらゆる作業を引き受けます。

遺品に特化しているプロ集団なので、親族の気持ちへ配慮しながら、一連の作業をスピーディーに進めてくれるでしょう。

不用品回収業者などとの違い

「遺品整理業者と不用品回収業者はどこが違うの?」と思う人もいるでしょう。もともと、不用品回収業者やリサイクル業者などが本業の延長として遺品整理を引き受けてきた経緯があります。

不用品回収業者は、遺品をあくまでも不用品やゴミとして分別するので、『遺品としての価値』や『家族の思い』は考慮しません。そのため、思い出深いものや供養が必要なものは、あらかじめ自分達で分別しておく必要があります。

高齢化社会に伴い、遺品整理の需要が増えた現代、『遺品整理の知識』というものが求められるようになりました。

遺品整理業者と名乗る業者は『遺品整理士』という民間の資格を持っているか、またはそれに相当する知識や経験があります。

遺品整理業者の需要は増えている

元気で長生きする高齢者が増えるに伴い、子供の手を借りず1人または老夫婦だけで暮らす高齢世帯が増えいます。こうした高齢者が亡くなった場合、遺品整理を残された家族だけで行うのは難しいです。

未婚率の増加、核家族化、超高齢化社会など、現在の日本を取り巻く環境を見ると、今後も遺品整理のニーズは高まっていくでしょう。

遺品整理士について

『遺品整理士の資格の有無』は、よい遺品整理業者かどうかを見分けるポイントになります。遺品整理の知識を持つ『遺品整理士』について解説します。

一般社団法人遺品整理士認定協会の民間資格

『遺品整理士』とは、一般社団法人遺品整理士認定協会が実施している民間の資格です。『遺品整理の取り扱い手順』や『遺品整理に関わる法規制』などの正しい知識を身につけ、遺品を『供養』の視点から取り扱うことを学びます。

この資格を取得すると、遺品整理という作業をより円滑に進めることができるだけでなく、行政から優先的に仕事を発注してもらえる可能性が高くなるでしょう。

高齢化に伴い、遺品整理のニーズが拡大する中、残念ながら不正をする業者も横行しています。業界の健全育成やモラルの低下を是正するという目的のもとでこの試験が実施されています。

遺品整理士の人数や仕事内容

遺品整理士の資格は、講座に取り組み、試験に合格することで取得できます。合格率は65%前後なので、勉強せずに簡単に合格できるものではないことが分かるでしょう。

遺品整理士認定協会の公式HPによると、平成29年7月の段階で、会員数は2万人となっています。資格認定後は、『遺品整理士』としての資格を掲げて活動できます。

しかるべき法規制に従い、正しい方法で仕分け・廃棄・引き渡しをするのが遺品整理士の実務です。「家族や親族に代わって整理をする」という責任感と緊張感を持ち、1つ1つの物と向き合うことが、遺品整理士の使命といえるでしょう。

遺品整理士がいる業者を選ぼう

遺品整理業者を選ぶときのポイントになるのが『遺品整理士がいるかどうか』です。

一般社団法人遺品整理士認定協会の遺品整理士の資格は、不正な悪徳業者のトラブルを防ぐことが目的の1つとなっています。遺品整理士の資格を持った人がいる、もしくは協会に加入している会社は、ある程度信頼ができるといえます。

協会の公式HPでは推薦優良企業の情報を公開していますので、こちらから業者を探すのもよいでしょう。

遺品整理業者を使う場合の費用やポイント

遺品整理は人生の中でそうそう多くあるものではありません。もちろん、遺品整理業者を使うのがはじめてという人がほとんどでしょう。

代行費用の相場や、どのようなプロセスで作業を進めていくかを把握しておくことは大切です。

相場を知ろう

実は、遺品整理には、明確な料金というものがありません。地域によって異なるゴミの処分費用や、部屋の間取り、面積、処分品の量、作業時間、作業にかかる人数などによって決定されるためです。

しかし、料金を不正に上げる悪徳業者が多いため、おおよその相場を知っておいて損はありません。提示された値段が相場とあまりにもかけ離れている場合は、料金設定を確認する必要があります。

1R・1K 3万円~8万円
1DK 5万円~12万円
1LDK 7万円~20万円
2DK 9万円~25万円
2LDK 12万円~30万円

たとえば、1人暮らしの1Rや1Kの部屋であれば、2トントラック1台で、作業人数は1、2名で済みます。物の多さにもよりますが、1時間から3時間ほどで作業は完了するでしょう。

1DKや1LDKになると2トントラックは2、3台必要になります。作業人数も2名から4名に増え、約2時間から6時間かかります。

見積もりの明細書は必ず作成してもらうこと

業者に依頼する前は、必ず見積書を作成してもらいましょう。インターネットで無料見積もりを実施しているところもありますが、きちんと訪問見積もりをしてもらわないと、当日費用がかさむ可能性が高いです。

また、業者側は、遺品整理の性質上、作業量が把握できないと正確な作業費用が出せません。

「電話でどのくらいある」と伝えても、実際トラック何台分になるのか、汚れやごみの程度はどうなのかまでは相手に伝わりません。業者なりの見るべきポイントもありますので、訪問見積もりは非常に重要です。

また、業者の人と実際に顔を合わせることで、本当に遺品整理をお任せできるかが雰囲気で判断できるでしょう。見積もりの段階で「あれっ?」と思う疑問点や、不明点があれば、遠慮なく聞いてみましょう。

複数の業者で見積もりを

通常、訪問見積もりは無料でとってくれる業者がほとんどです。1社だけでなく、2社、3社と複数から見積もりをとり、比較、検討することをおすすめします。

ただし、同じ日時に業者が重なる『相見積もり』は避けた方がベターです。

必要以上に相見積もりの依頼を出すと、伝え漏れが出てきたり、話の内容が混乱する可能性が出てきます。時間や日にちをずらして来てもらうなど、業者に対する配慮も忘れないようにしましょう。

遺品整理業者の選び方のポイント

よい遺品整理業者を選ぶポイントを3つの視点から解説していきます。

専門業者であることが前提

選び方の1つ目のポイントが『専門業者である』ということです。遺品整理と単なる不用品処分は異なるので、遺品整理の手順やルールを理解していること、経験が豊富であることなどが重要です。

『遺品整理士の資格を持つスタッフが在籍しているかどうか』は専門業者とそうでない業者を見極める大切なポイントとなります。

また、他人の廃棄物を処理するためには、『一般廃棄物免許』を取得していることが前提となり、免許がない場合は、業者が取得済みの工場に処理を委託しなければなりません。

見積もりの際に、廃棄物の処理法について曖昧な回答しか返ってこない場合、廃棄物を不法投棄する悪徳業者の可能性も否定できないでしょう。

相談や見積もり時の対応

よい遺品整理業者はこちらから要求しなくても、見積もりの明細書をしっかりと出してくれます。

明細書を出さない、質問しても見当違いな答えが返ってくる、という業者には十分注意しましょう。当日になって、追加料金がどんどん請求される可能性があります。

スタッフの態度や説明の丁寧さは、業者を見分ける大切なポイントです。

料金体系が明確

たとえば、悪徳業者の料金体系によくありがちなのが、「1万円~」と最低金額の後ろに、「~(から)」を付けて、料金を明確に表示しないケースです。追加料金、オプション料金がしっかりと決められているのかを必ずチェックして下さい。

また、一部だけをHPに載せて『激安』とうたったり、追加料金が発生すること、例外があることを敢えて小さく表示していることもあります。

遺品整理業者を選ぶときは、すべての料金体系が明確で、しっかりと説明してくれるところを選びましょう。

遺品整理業者に依頼できることとは

遺品整理業者に依頼できるのは、主に『生前整理、特殊清掃、遺品整理立会代行』の3つです。具体的な内容を見ていきましょう。

生前整理

『生前整理』とは、本人が存命中の間に、家財道具や生活用品、思い出の品々を整理することをいいます。

「認知症で物忘れする前に形見分けをしておきたい」と考える人や「体力の低下で日常的な整理整頓が難しくなってきた」、「遺品整理で家族に迷惑をかけたくない」という理由などから生前整理を考える人が多いようです。

家族・親族側からすれば、形見分けのトラブルが減り、遺品整理の手間が省るというメリットがあります。また、生前整理をすると部屋がすっきりとするので、老後がより快適に暮らせるでしょう。

生前整理の流れとしては、依頼者に片付けアドバイザーが寄り添いながら、『今後の生活上で不用なもの』と『家族に残す財産』を仕分けします。

また、必要があれば、家具の移動を含む『居住空間の変更』も行います。

特殊清掃

『特殊清掃』とは、孤独死や事件・事故に巻き込まれて亡くなった場合、その現場の痕跡を綺麗に清掃し、元の状態に戻すことを指します。

血液や体液などでついた汚れはもちろん、腐敗した遺体やゴミから発生する異臭の除去、ハエやウジなどの害虫の駆除も含む大変な仕事です。

特殊清掃を行うには、『事件現場特殊清掃士』の資格を持っていることが好ましく、特殊な清掃機械も必要になります。

遺品整理立会代行

遺品整理をする業者とは別に、第三者の立場としてその場に立ち会い、不正が行われないか、適切な処理がなされるかを監視するサービスです。

遺品整理業者や不用品回収業者の中には、利益のみを追求する悪徳業者も存在します。故人が亡くなった直後の慌ただしさなどにつけ込んで、高額請求や金品の持ち出し、不法投棄などの行為を働くのです。

遺品整理立会代行があることで、このようなトラブルを未然に防ぐことができます。

遺品整理の注意点

遺品整理ときの注意点を『相続に関するトラブル』と『業者とのトラブル』の2つに分けて説明します。

相続に関するトラブル

特に身内が亡くなった際、自分勝手に遺品整理をし、処分してしまうと、後々に親族とのトラブルに発展することがあります。故人の遺品は『相続財産』になるため、必ず親族に通知しなければなりません。

具体的には以下のようなトラブルがあります。

形見分け

遺品を、故人の親族や友人で分けることを『形見分け』といいます。

親族が全員集まる四十九日の法要時などに形見分けや遺品整理の日程を組み、参加できない人に関しては、不用品を処分する了承を得ておく必要があります。

個人が勝手に遺品整理をしてしまうと「あれは形見として自分がもらうものだった」と揉めたり、形見分けの際に、高価な遺品をめぐって奪い合いになることもあるでしょう。

故人が亡くなったときは、遺言状の有無も確認しててください。相続の際には法的効力を発揮します。

業者とのトラブル

遺族ではない他人(業者)に遺品整理をお願いすることで発生するトラブルもあります。

よくあるのが業者に、見積書とは違う高額請求をされるトラブルです。故人が亡くなり気が動転しているのにつけ込んで、追加料金やオプションを次々と加えたり、高齢者に分かりにくい表示の仕方をするケースがあります。

この場合は、どこに差額が発生したのかを追及し、解決しない場合は、弁護士や消費者センターへ相談しましょう。

また、一般廃棄物収集運搬許可証を持っていない悪徳業者は、引き取った不用品を不法投棄して処理しようとします。「自治体から投棄物を持っていくように連絡がきて、さらに罰金までとられた」ということもあるので、業者の見極めは非常に重要です。

まとめ

遺品整理は、故人をしのび、弔う大切な機会です。しかし、家が遠く離れている、遺品が多すぎて個人で整理し切れないというやむを得ない事情もあるでしょう。

遺品整理業者は、こうした遺族の気持ちを理解して、丁寧に作業を進めてくれるかどうかが重要です。業者選びは慎重に行いましょう。