遺品整理処分は時間や体力、気力を要します。果たして自分だけでできるのか、やってはまずい事があるのかなど、様々な疑問が出る事もあるでしょう。遺品整理処分についての注意事項や業者に頼むメリット、物品による適した処分方法などを紹介します。

遺品を片付ける準備と時期

親族や身近な人が亡くなって、遺品を片付ける時にはどんな事に気をつけて行うと良いのでしょうか。また、遺品を片付けるのに適した時期はいつなのでしょうか。まずは片付け前に注意したい事を考察していきます。

相続放棄するなら遺品整理に注意を

遺品を整理処分するのは親族であれば誰でもOKなわけではありません。相続放棄をする場合の人は注意が必要になります。

相続とは、故人についての負債も含めたすべての財産を継承する事で、その権利を放棄する事が『相続放棄』です。その場合、故人の借金を引き継がなくて済みますが、同時に故人の遺産などの財産も引き継ぐ事はできません。

遺産整理処分に際して、『財産価値のある遺品を売却』したり、劣化のある財産を『壊して処分』してしまった場合は、法律的に相続放棄ができなくなる場合があります。

故人に対して債権者などが存在する場合には、上記のような行為について、法的に訴えられてしまう事もありますので、不安がある場合は専門家に相談するのが得策です。

遺品処分の時期は状況により異なる

遺品の整理処分を始める時期は、故人の生前の住まい方によっても変わってきます。賃貸で暮らしていた場合、賃貸人が故人になっても家賃は発生します。その場合、なるべく早く遺品処分をしないと、家賃を払う事になりかねません。

持ち家で家族と暮らしていた場合は、家族の気持ち次第で決められます。特に配偶者を亡くした場合などは、子供がさっさと遺品処分を始めてしまうと多くの配偶者は余計に寂しい思いをする事もあるでしょう。

このように住まい方の違いで時期は必然的に変わってくる事があり、処分に適している時期は『人それぞれ』です。ただし、死亡による法律的な手続き、たとえば年金受給停止や国民健康保険の返却など期限が決まっている物がありますので、注意が必要です。

遺品整理の仕方

遺品整理処分のタイミングが熟したら、整理を始めます。残された遺族は莫大な量の遺品を前にして、どのように整理していくのがいいか、頭を悩ます問題でしょう。まずはどのような観点で整理するべきなのでしょうか?

必要なものを仕訳する

最初にすべての品を大雑把に『必要』な物と『不要』な物に大別する事が重要です。必要な物の中で、さらに形見分け・相続財産(貴重品など)・後から必要になるかもしれない資料や書類などを仕分けします。

必要な物は種類別に専用の箱などを使い、何が入っているかわかるように『手続書類』や『形見』などと明記し、誰が見ても間違って処分しないようにしておくのが望ましいでしょう。

形見分けをする

悲しみも癒えないうちに遺品整理を始めるのは、心情的につらい事もあります。諸事情で早く済ませなければいけない場合以外は、少し余裕ができてからするのが一番いい方法です。

故人の『遺言やエンディングノート』などに、形見分けについての『希望』が書かれている場合もあります。故人の意志を尊重しながら決めましょう。

家族や親族の誰かから「勝手に処分した」と不満の声があがらないように細心の注意を払い、トラブルにならないように注意した方が無難です。

また、形見分けか処分かで迷う場合は、とりあえずは保管しておきましょう。後から形見分けしたい人が出てきたり、残しておいて良かったと思えるケースも実際にあります。

遺品処分の仕方

遺品を処分するには自分たちで行うほかに、専門業者に依頼する事も可能です。メリットとデメリットを比較し、どのように処分するかを検討しましょう。

自分で処分する

自分たちで遺品整理をする場合は、ある程度の時間的余裕がある場合や、自分たちで整理をしてあげたいという気持ちがある時です。業者に依頼しないので、比較的、費用を抑える事が可能です。

デメリットとしては、故人との別れがつらい時、故人の所持品に触れて精神的にきつい事があります。思い出などが蘇って、なかなか効率的に進まないこともあります。けれど、そういった時間を経て、少しずつ心の整理ができるようになる場合もあります。

遺品整理回収業者に依頼する

遠方に住んでいて遺品整理に通えない場合や、時間の制約がある場合はプロに頼む事もひとつです。立ち退き日が直前で、不用品が多く自分たちで処理するには荷が重すぎる場合など、専門業者の力を借りるとストレスも減ります。

また、業者によっては、買い取りも一緒にしてくれる場合や遺品供養を仲介してくれるなど、さまざまな処分を一括で依頼できる業者もありますので、効率的に時間を使えるメリットも生まれます。

デメリットは費用がかかる事があげられます。また、他人に依頼する分、遺品であっても不用品のようにぞんざいに扱われたと感じてしまう事もあるかもしれません。

価値のある遺品は売るという手段も

遺品の中で、遺族には不要な品でも、財産的には価値がある物もあります。何らかの方法で売却して、今後の故人の法要費用に充てる事や相続人の財産にする事ができるのです。どのような物に資産価値が生まれるのか、また高く売る方法をご紹介しますので、参考にしてみてください。

高値がつく物とは

高値がつく物にはまず、貴金属や高級腕時計・骨董・絵画・掛け軸などの芸術品・品質が良い着物・ブランド品・貴金属が使用されている仏具や眼鏡などがあります。

貴金属は何時の時代にも財産価値になります。素材を利用して、他の物に作り替える事も可能なので好まれるでしょう。他にも、お酒や人形などが場合によっては貴重品として価値がある場合があります。ただし、素人目には価値がわからないものも多いため、価値がありそうだと思ったら鑑定に出してみるのも手です。

できるだけ高く売るには

より高く遺品を売却したい場合は、着物買取専門や貴金属専門など、複数の専門業者と取引きすると、より高額売却が可能です。家電などでは取扱説明書や付属品を、ブランド品は専用の箱付きですとさらに良いでしょう。また、綺麗に掃除してある事もポイントになります。

インターネットで買取価格を比較できるサイトもあります。『ヒカカクコム』は、売りたい物の買取価格を一括で査定でき、売りたい業者を見つけたら、そこから該当業者のサイトページにコンタクトできます。

全部で40以上のカテゴリーがあり、貴金属&宝石、プランド品から趣味などの道具(釣り具・ピアノ・鉄道模型・バイクなど)金券チケット、工具や調理器具などが扱われています。

ヒカカクコム公式サイト

遺品はどこで売るのが良いか

遺品はどこで売るのが良いのかは、どこまで時間を取れるか、どんな状況に相続者が置かれているか等によって大きく変わります。

大きく分けると買取業者・リサイクルショップ・質屋・ネットオークションの4種類となります。それぞれの特徴について具体的に見ていきましょう。

買取業者

家具や大型家電などが多い場合は、遺品整理業者に買取ってもらう方法があります。仕分けから掃除まで全てやってもらえるので、作業的には1番スムーズに進む方法です。立ち退きや他の理由で時間に追われている場合や、何らかの理由で遺品のある現地に出向くことができない場合などには、もっとも賢い選択です。

ただし、上記にお知らせしたように、それぞれのアイテムの専門業者ではないので、買取金額はある程度、大まかになります。

リサイクルショップとの違いとは

『中古品小売業』にあたるリサイクルショップは、買い取った商品を再利用するのがメインであり、再利用できない物の回収や処分は断られる事が普通です。リサイクルショップが『一般廃棄物処理業』も兼ねている場合は、回収処分してくれる店もあります。

手間をかける事をいとわない場合には、服飾や家電系など各リサイクルショップの得意分野により、『複数店』で見積もりを取って比較して高額売却につなげる事もできます。

大型の家電や家具がある場合は無駄足にならぬ様、1度、電話や電子メールなどで聞いてみる事をおすすめします。大量の場合は査定に来てくれたり、訪問買取りしてくれる店もあります。

質屋

質屋の業務は、預け入れた品物の価値に応じて、金銭貸付けを行う事と価値に応じて買い取りする事です。他の方法に比べて正確な市場価値を査定してくれるので、遺品に高い値がつくこともあるかもしれません。また期間は限定されますが、質入れした後でも手元に戻したい場合にも買い戻す事が出来ます。

ただし、物品アイテムはある程度限られ、生活雑貨などの大量生産品などは買い取ってもらえず、処分もしてくれません。あくまで市場価値のある貴金属やブランド品を扱う質屋が大半ですので、遺品を一括で処分したい場合などには不向きな方法と言えるでしょう。

インターネットオークション

インターネットオークションは、サイトの管理会社に、販売価格による割合によって手数料を支払います。

何よりも売買のニーズと適正価格をお互いに決められるので、ブランド品でなくても必要としている人に届くのが嬉しい点です。専門業者だけが鑑定するわけでもないので、市場価値がないものでも高く売れるケースもあります。

ただし、写真撮影や説明文を書くなどの作業が必要です。オークションサイトで売却が決定した場合にだけ、郵送や手渡しでOKなので気軽に利用できますが、いつ売れるかは不明で、それまで保管しておかなければならないという手間も生じます。大型で郵送にしくいものは、引取りに来てもらうか、専門配送業者を使う事になるでしょう。

その他の遺品の処分方法

前述した遺産の処分方法以外にも、異なるやり方で処分が可能です。下記を参考にしてみてください。

家電は法律に沿った正しいリサイクル方法で

一般家庭から出た、特定の家電類は処分する際に家電リサイクル法という法律があります。対象になる家電は『 エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機』の4品目で、まだ使える部品や材料をリサイクルする方法です。

まず、該当商品を購入した店舗に引取り依頼をします。店から回収業者に連絡が行き、指定された日時に訪問回収されます。『 家電リサイクル券』に必要事項を記入して渡すとその控えから、ネット上でリサイクル状況の確認ができます。

中には違法な業者もあります。彼らは正規の方法に従ってリサイクルしない場合があり、正しく処理したかの確認が取れません。環境破壊の原因になり、大きな問題になっています。正規の業者は『一般廃棄物収集運搬業許可』を取得していますので、こちらの業者に頼むようにしましょう。

大きな家具は各自治体のルールの確認を

不要な大型家具は自治体で、粗大ゴミとして回収してもらうことができるのです。『戸別回収と自己搬入の2つの方法があります。自治体によって金額や方法などが少し異なる点には注意が必要です。一般的な手順を紹介します。戸別回収では

  1. 自治体に電話で申し込む
  2. ゴミの収集シール(処理券)を購入する・その際に受付番号が発行される
  3. 指定日に受付番号を記入したシールを添付し、自宅前に搬出する

という手順です。自己搬入では金額が多少安くなる事がほとんどです。自治体に問い合わせ、搬入許可をもらったら指定場所に搬入します。

寄付する

お金にはなりませんが、まだ綺麗な衣類などは、支援団体などに寄付する事も考えた方がいいでしょう。廃棄処分してしまうより、誰かの役にたてるので気分的に救われた気持ちになれます。

また、本は図書館や近所の病院などに寄贈するという方法もあります。まだ使える健康器具などは学校や公的機関のトレーニング場などに使用してくれる事もあるので、自治体に相談してみるといいかもしれません。

また、遺品を売却した『代金』を寄付するという方法もあります。売却代金を故人に関係の深かった団体や近所の福祉団体などに寄付ができます。本の寄付では、不要引取りした本を現金に換えて、こちらが指定した福祉団体などに寄付をしてくれるという企業もありますので、調べてみてもいいでしょう。

遺品整理回収業者の選び方

遺品整理回収業者は全国にたくさんあります。昨今の高齢化社会や遺族が多忙を極める生活のために遺品整理を外注する人が増えたからです。

業者選びに失敗してトラブルになったり、嫌な思いをしないように以下のポイントで選ぶと良いでしょう。

資格所有者在籍の業者を選ぶ

遺品整理専門でない、リサイクル業者や廃棄物処理業者、便利屋、引越業者などが本業の延長で遺品整理代行を行うようになり、遺品整理についての知識不足の企業がたくさんあります。

正式な整理回収業者には『遺品整理士』が存在します。この資格とともに『一般社団法人遺品整理認定協会』に加入しているかどうかを資料やホームページで確認しましょう。

一般社団法人遺品整理認定協会とは、遺品整理についてトラブルを防ぐために作られた団体です。遺品整理士は協会認定制で、遺族への心配りの配慮や供養の気持ちを持って遺品を取扱いができ、処分に関する法律や知識を学んだ人に認定されます。これらの資格を有している業者は比較的、安心して依頼できるでしょう。

問い合わせ対応が丁寧かチェック

遺族にとっては遺品は故人の思い出もあり、大切に扱いたいと思っている人が多く存在します。遺品整理業者も遺品を大切に扱うという気持ちで、真摯に対応してくれる業者を選びましょう。

最初に連絡をした際の電話応対から、見積もり訪問に来た時の対応まで誠実で丁寧がどうかをチェックします。こちらからの質問にもきちんと対応してくれるか、見極めてから依頼した方がトラブルなどに遭遇する確率も減るのでおすすめです。

見積書などに費用の明細の記載がある

電話やメールだけの見積もりで最終的な判断を下さない方が良いでしょう。訪問して実際の状況を見ないで詳細な見積もりはでないため、告知価格と差が開く場合もあります。また、基本料だけを見積もって、あとから追加で料金が発生するなどは避けたいものです。見積書に『作業一式』のみの抽象的な記載も好ましくありません。

遺産整理業者に仕事を依頼するという事は、遺族は細かな作業まで、まかせたい場合が多くあります。

遺品の中で供養や寄付をしたい物があるとすると、そういった遺族の要望に関わる諸費用なども、見積もりに項目が記載されているかどうかを確認した方が無難です。人件費などの基本料金の他、すべての『費用明細』が見積られているかが判断の目安になります。

遺品の整理や処分に関する注意点

これまで遺品の整理や処分に関しての情報をお知らせしてきました。ですが、まだ言及していない大事な事柄があります。

それは、相続人が遺品処分を行う時には、相続人全員の合意を得て行う事を忘れてはいけません。遺品には財産価値が含まれている物もありますので、あとで利害関係でトラブルにならないように注意する事を忘れないでください。

他には細かな事ですが、注意したい点や理解しておきたい事をお知らせします。

家具の処分前にタンス預金を確認しよう

タンスやその類の家具を処分する時には、故人の『タンス預金』などを発見する事もあるかもしれません。そのまま、処分してしまう事も考えられますので、タンスや書籍、本棚などにへそくりが隠れていないか、忘れずに確認しておきましょう。

風水的に遺品を持ち続けるのは良くない?

最近は『風水』の考え方を暮らしの中で生かしている方もいらっしゃるでしょう。風水では、『物には気が宿る』とされており、身近な物が住んでいる人へ影響するという考えです。

持ち主が亡くなった場合には『陰の気を持つ物体』に変わり、回りの人々にその気が影響を及ぼす事もあるので、遺品は手放した方がいいという考え方もあります。

風水の考え方でも、亡くなった人に感謝を持つ気持ちは尊いとされていますが、それらに引きずられて遺品がいつまでも処分できずに邪魔になっては本末転倒です。遺品の中で、それを見て気分が良く、故人に感謝できるような気持になれる物は形見として手元に残してもいいという教えもあります。

処分しにくい遺品は供養を

風水的な考え方だけでなく、実際的に遺品を処分しないと保管場所がないなどの問題は起こりやすいものです。一方、故人の思い出の品や身近だった物を廃棄処分するのは、忍びないという気持ちになるのが人情でしょう。

その場合には『遺品供養』をするという方法を行いましょう。遺品の供養とは、処分直前にお経を唱えて、遺品に宿っている魂を抜いてもらう作業の事を指します。神社仏閣で行うことが多いですが、供養を依頼できる遺品整理業者もあります。

まとめ

ほとんどの方は、人生の中で遺品を処分するという経験が少ない為、いざ整理処分する時に不明点が色々出てくるのは当然の事です。遺品を目の前にして、その多さに困惑する事もあるかもしれませんが、遺品整理をする事で、残された人の心の整理にもつながります。

自分が遺品整理処分する時には慌てないように、ある程度の知識を頭に入れておきましょう。