ニュース番組で、『ゴミ屋敷で火災が起こった』と報じられているのを見たことがありませんか?そもそもなぜ、ゴミ屋敷は大規模な火災の原因になるのでしょうか。また、ゴミ屋敷による被害を防ぐにはどのようにしたらいいのでしょうか。
ゴミ屋敷が原因の火災が多発中
ゴミ屋敷が原因で発生する火災が、近年多発してるのを知っていますか。たとえゴミ屋敷が数軒先にあるとしても、ひとたび火災になれば延焼する可能性もあります。具体的な事例をご紹介します。
愛知県豊田市でゴミ屋敷から出火
2015年8月の夜に、愛知県豊田市で木造2階建ての住宅が全焼した事故がありました。ゴミ屋敷から出火し、両隣の住宅にも火が燃え移ってしまいました。
過去にも何度か小さな火事があり、近隣住民は不安を抱えていました。このゴミ屋敷は10年前からゴミによる異臭がしており、小さな火事が続いたことで行政執行されたこともありました。そして、とうとうこのような大規模な火災となってしまいました。
福島県郡山市では死亡火災も
福島県群山市では、ゴミ屋敷の火災によって死亡者が出てしまいました。
2016年の10月に、木造の建物1棟が全焼する火事が発生しました。この建物は以前からゴミ屋敷として知られており、住人とみられる男性が死亡しました。このゴミ屋敷は、火災への懸念から群山市によるゴミの強制撤去なども行われていたのですが、約51平方mに及ぶ大規模な火災となってしまいました。
ゴミの強制撤去は家の中までは及ばなかったので、このような結果になってしまったと考えられます。
火災の原因は?
そもそもゴミ屋敷から発生する火災の原因は一体なんでしょうか。この項目では、実際によくある原因をいくつかご紹介します。
煙草等が原因の失火
煙草の火をきちんと始末しなかったことで起こる火事は多いです。また、煙草のポイ捨てによるボヤも少なくありません。これらの火が移って火災へと発展していくわけですが、その着火物の中で、屋内や屋外のゴミの割合が非常に多いという事実があります。
煙草の不始末やポイ捨てはもちろん気をつけるべきですが、ゴミを放置しないことで着火を防ぐことも重要です。
トラッキング火災
トラッキング火災とは、コンセントに挿入したプラグと挿入口の間にホコリが溜まり、着火してしまうことによる火災です。このような現象のことを『トラッキング現象』と呼びます。以下のような状況だと、トラッキング火災が起きやすいとされています。
- コンセントを長期間、挿しっぱなしにしている
- 湿気が多い場所にあるコンセント
- 掃除をせずに放置している
定期的にコンセントを抜き、掃除用クロスなどで拭き取ることでトラッキング現象の対策ができます。しかし、ゴミ屋敷のような状態だとコンセントがゴミに埋もれてしまっており、このような対策ができる状況ではありません。
また、プラグと挿入口だけではなく、コンセント周辺に着火物を置かないことも大切です。コンセント周辺にゴミやホコリを放置しておくと、トラッキング現象が起きた際にあっという間に火が燃え移ってしまいます。
放火
火災の原因で最も多いのは『放火』によるものだと言われています。それ以外にも『放火の疑い』による火災も多いので、併せればかなりの件数だと考えられます。
放火に至る理由は人によって様々ですが、ストレスを抱えたり、些細なイライラから放火してしまうこともあるようです。
放火を厳しく取り締まることも重要ですが、放火の対象とならないことも同じくらい重要です。ゴミ屋敷のような家は、すぐ目の前にゴミがあり火が燃え移りやすいため、ターゲットにされやすいのです。それによって困るのは自分だけではなく、近隣住民にも迷惑をかけてしまいます。地域の人々と協力して、放火されないような環境を維持することが大切です。
ボヤでも大規模な火災になるリスクが高い
片付いている家と比べて、ゴミ屋敷は例えボヤでも大規模な火災に発展しやすいのです。その理由を解説します。
ゴミで消火活動が進まない
ちょっとしたボヤであれば、早急に消火すれば大ごとにはなりません。しかし、ゴミ屋敷の場合は大量のゴミによって消火活動が進まないので、あっという間に大規模な火災となってしまいます。
ゴミ屋敷のゴミの大半が可燃性のものが多い上に、大量にあるさまざまな物に阻害されてしまうので、少しの火でも、気が付いた時には取り返しがつかない状況になってしまいます。
物が多いため燃え続ける
ゴミ屋敷は、着火物となる物がたくさん放置されているので、簡単に火が燃え移ります。物が多いと、消しても消しても燃え続けてしまいます。
また、ボンベなどの危険なゴミが放置されていることもあります。その他にも煙草の不始末、ストーブなど火種に事欠かないため、火災が発生しやすいです。
ゴミ屋敷はいつ火災に発展してもおかしくないので、放置するのは危険です。近隣にゴミ屋敷があるなら、早めに自治体などに相談するようにしましょう。
被害を受けても補償されないって本当?
ゴミ屋敷が原因で発生した火災に巻き込まれたら、その被害に対して補償はあるのでしょうか。
失火責任法による免責
本来であれば、自らの不注意によって他人に損害を加えた場合は、損害賠償に応じる責任があると『民法709条』にて定められています。しかし、火災の場合は被害が甚大になることが多く、失火者に対して民法709条が適用さないことがあります。このことは、明治から制定された『失火責任法』という法律で定められています。
つまり基本的には、ゴミ屋敷が原因の火災であっても、その住人には損害賠償に応じる責任はないということになります。
損害賠償請求できる場合もある
失火責任法により、建物や家財に大きな被害を受けたとしても、損害賠償請求をすることは原則できません。
例外として、失火者に重大な過失があると認められたときは、損害賠償請求が認められることもあります。しかし、ゴミ屋敷の住人に損害賠償に対応するだけの資金がなければ、現実は厳しいでしょう。
ゴミ屋敷による被害を防ぐ方法は?
ゴミ屋敷によって起きた火災は、基本的に損害賠償ができないことがわかりました。それでは、ゴミ焼きによる被害を防ぐにはどのようにしたらいいのでしょうか。
行政への訴え
近隣のゴミ屋敷に迷惑を被っている場合は、速やかに自治体に相談しましょう。ゴミ屋敷を取り締まる法律がないので、これが1番の策だといえます。
できれば近隣住民と協力して苦情を訴えるほうが、より効果的でしょう。行政による強制執行により、ゴミが撤去され、被害を軽減できるはずです。しかし、行政代執行になるまでには時間がかかる場合もあります。
賃貸に住んでいる場合は、大家さんにも相談してみましょう。
火災保険を掛けておくのが安心
失火責任法がある以上、自己防衛の手段としては火災保険に加入することをおすすめします。また、火災保険に加入する前に、近隣がゴミ屋敷であることを伝えておくと良いでしょう。
火災保険は、火災事故以外にも風災・雪災・水災などの補償も受けることができるので、『ゴミ屋敷の住人のせいで火災保険に加入するなんて勿体無い』と思わず、万が一を考えて加入して損はありません。
火災保険は契約する建物によって保険料を決めるので、明確な相場はありません。賃貸の場合は、大家に相談しましょう。戸建の場合は、複数の保険会社に見積もりを出してもらい、慎重に選んだ上で加入しましょう。
まとめ
ゴミ屋敷が近隣住民にもたらす被害は計り知れません。悪臭や道路妨害も問題ですが、ほんの些細なことで大規模な火災になりかねないのが恐ろしいところです。
失火責任法を知らない人は、ゴミ屋敷による火災の被害を受けたあとで損害賠償できないことに気づき、大きなショックを受けることでしょう。そうならないためにも、行政への訴えや火災保険への加入など、できる限りの対策をしておきましょう。
また、自身の家がゴミ屋敷にならないように心掛けることも大切です。