親が高齢になってくると、実家の片付けが行き届かなくなってくることがあります。久しぶりに実家に戻ったらゴミ屋敷化しているというケースも少なくありません。そこで、親とコミュニケーションを取りながら実家を効率的に片付けるコツや方法について紹介します。
実家のゴミ屋敷化が社会問題に?
「久々に帰省したら実家がゴミ屋敷化していた」といったケースが、ちょっとした社会問題になっているのはご存じでしょうか?高齢化社会の波も相まって、ゴミ屋敷化する実家が増えているようです。
高齢の親や親戚がいる場合はあながち無関係とも言い切れません。そこでゴミ屋敷化の原因について、まずは知っておきましょう。
物を貯め込む傾向
年を取ると次第に新しいことを覚えるのが億劫になってくるため、古くて大きな家電などが家の中に残り続けるようになります。長年使っていることで愛着がわいてしまい、子供が捨てるように言っても聞かないことが多くなってくるようです。
また、若い頃に比べて体力が減ることで出歩かなくなり、物を近くに置きたがるようになります。
来客が減ることもあり「自分たちしかいないのだから多少は散らかっていても平気だろう」という方向に気持ちが傾いていくと、リビングにどんどん物が増えていくのです。
認知症により片付けができないケースも
片付けには、元々物がどこに置いてあったかを覚えている記憶力、どのように整理していくかの判断力がある程度必要です。
認知症はこれらの能力が低下してしまいます。物のある場所を忘れてしまい、探し物をするときに家中をひっくり返すようなこともあるようです。そしてひっくり返したものを片付けようとしても物がどこにあったかがわからなくなるため片付きません。中には「家族が盗んだ」という疑いを持ち始める人もいます。
このように認知症が進行してしまうと、自分で家の中を片付けるのが困難になってしまうばかりか、周囲の話に耳を傾けなくなっていくのです。
実家の片付けをすべき理由
実家が散らかっていることで、住んでいる両親の暮らしに様々な弊害が出てくることが予想されます。そうなる前に住んでいる人が片付ければ良いと思うかもしれませんが、それができなくなっていく理由があるのです。
実家の片付けをしないことでどのような弊害が出るのか、また実家に帰った際に片付けをした方が良い根拠とあわせて解説します。
物が多いと怪我や健康リスクがある
若い頃は平気でも、年を取るとちょっとした段差に躓いたり、骨が脆くなることで軽い衝突でもケガを負ったりすることがあります。
物が多いと転倒の原因にもなりますので、注意が必要です。
また、掃除にも支障をきたすような環境下では、カビや雑菌、ダニが繁殖しやすく、衛生面にも問題が出てくるでしょう。
年をとると更に片付けしにくくなる
親が高齢になってくると体力がなくなってきます。掃除をしたり、廃品を処分したりすることが難しくなっていくのです。家の中が散らかると、ますます片付けが困難になってしまいます。
また高齢になると介護が必要になり、夫婦がいずれも高齢であるにもかかわらず一方が一方を介護するという『老老介護』になっているような状況も問題です。
久しぶりに実家に帰っていたらゴミ屋敷になっていた…ということがないように、両親が高齢なら実家に定期的に顔を出すようにしましょう。
片付け前の準備
実家の片付けは、急に思い立って行ったり、何かの片手間にできるものではありません。事前に両親と話し合って、片付けに納得してもらうことが重要です。
片付け前の準備として、両親との話し合いなど色々先立ってやっておきましょう。
問題の共有
実家を片付けるに当たって、さしあたって何が問題なのかを、親と認識の擦り合わせをしておきましょう。実家に物が散らかっていても、それを親の方は問題視していないこともあります。散らかっていることが問題なのだと認識してもらわないと、例え一時的には実家が片付いたとしても、また時間が経つと元に戻ってしまうでしょう。
衛生上のリスクや、片付けることで住みやすくなるといった点について、まずは根気よく話し合って納得してもらう必要があります。
目標設定
片付けを行う上での最終的なゴールについても、親ときちんと共有しておきましょう。また、自分の家と違って実家の場合は『親が安全で、安心して暮らせること』がゴールになるわけですから、単に綺麗にして終わりというわけではありません。
親がケガをしないように、通路の確保や、暮らしやすくなるバリアフリーの設置なども視野にいれていきましょう。
子供側の一方的な要求だけでなく、プライベート空間の確保や思い入れのある物は残しておくなど、親側の要求についても検討して、両者にとって理想的な目標を設定することが求められています。
片付け当日の手順
親との合意も得られていよいよ当日です。当日の片付けの手順について、詳しく見ていきましょう。
不要な物を仕分けし処分
まずは、必要なものとそうでない物を仕分けします。
1度すべての物を並べてみると、分別がしやすいですし、親にとっても必要・不必要の判断が楽になるでしょう。すべて並べるのが難しい場合はリスト化するなどの工夫をしても良いかもしれません。
注意点として、親の物を勝手に捨てずにきちんと了承を取りましょう。不要なものだと判断して勝手に捨てると、後々の関係に亀裂が入る可能性があります。
その後は、不要なものをピックアップして、その処分方法について検討しましょう。可燃や不燃はもちろんですが、大型ゴミや家電については別途の処分方法を検討する必要があります。
あまりに処分品が多い場合は、業者に依頼するという方法もおすすめです。
残す物を整理整頓
不要品処分の目処がついたら、次は残すものについて整理整頓を行います。
用途や重要性によって整理していくのも大切ですが、1番考えなければならないのは住んでいる人間が使いやすいようにすることです。
足腰が弱っている親の場合は、なるべく手の届きやすいところに使う頻度の多いものを置くようにしましょう。親の腰の高さにあわせた台や収納ボックスの購入を新たに検討しても良いかもしれません。
片付いたスペースから清掃
物の分別が終わって、床がすっきり見えるようになったら清掃を行います。
清掃のポイントは高い所から行うことです。床から先に清掃してもその後に天井や壁を掃除して埃が舞ってしまえば、また床を掃除しなければなりません。
掃除機をかけ、モップやから拭きをかける時は奧から手前に行います。これは掃除した箇所を足で踏まないようにするためです。
両親とも協力して清掃を行えば、達成感を共有できるでしょう。
実家の片付けをスムーズに進めるコツ
実家の家主は両親ですので、実家の片付けは両親の意見を尊重して行う必要があります。そのためにも両親との円滑なコミュニケーションを取り、スムーズに片付けをしていきましょう。
コミュニケーションを取る
両親に納得してもらうためにも、頭ごなしに要求するのではなく、提案という形に持っていきましょう。
「同じ物2つもいらないだろ」という頭ごなしに言うよりも「どちらかを残す形にしない?」と選択権があった方が両親も聞き入れやすく、対立するリスクも少なくなります。
両親がどうしても捨てたくないという物については、取っておくことも考えましょう。要求を棄却してばかりでは反発を招いてしまいます。
1番大切なのはお互いの信頼ですので、普段から連絡をまめに取り合い、信頼関係の構築に努めましょう。
できるだけ物を減らす
ゴミ屋敷になってしまう原因の発端は、物が多くあることです。事故やゴミ屋敷かを防ぐという意味合いからも、家の中にある物の数は減らすことをおすすめします。親が反対する場合は根気よく説得していきましょう。
特に、両親が高齢の場合は生前整理についても視野に入れましょう。段階を踏んで着手していかなければ、両親が急に認知症になる、怪我をして入院するなど後々できなくなるケースもあります。遺品整理は遺族の負担のもっとも大きい部分なので、両親の生前から少しずつ手をつけていってもらいましょう。
両親の反対が強いようであれば、まずは自身が断捨離を行って手本を示すようにします。学生服や昔の学用品が残っているなら率先して捨てていきましょう。また、まずは小さなものから捨てていくと良いようです。いきなりクローゼットやタンスのような大きなものを捨てようとすると拒否される可能性が高くなります。
必要ならプロの手を借りる
片付けに着手しようと思ってもすでに子供は社会人で、休日を利用して実家に行って掃除をするのではかなり負担が増えますし、すでに素人が片付けるのは無理なレベルで散らかっていることもあります。そういう場合は、片付け専門の業者の手を借りることも視野にいれましょう。
費用はかかりますが、不要品の処理やクリーニングまで行ってくれるので、自身でする手間はかなり軽減されます。専門業者の言葉でなぜ物を捨てなければならないかの根拠を明示できれば、両親が聞き入れる可能性も高くなることがあるでしょう。
ただし、実家の家主は両親であり、両親が拒否すれば業者は入れません。そのため、業者を入れるところまではきちんと両親と話し合っておく必要があります。
二度と汚さないことが大切
実家の片付けが終わったからといってそこがゴールではありません。大切なのは、2度と以前の状態にしないことです。そのために、親と取り決めておくべき様々なことがあります。
家を綺麗に保つルールを決める
実家を汚さないために、両親との間にいくつか取り決めを交わしておきましょう。物を床に置かない、定位置に戻すといった簡単で守りやすいルールにするのがポイントです。あまり項目が多いと生活にストレスを感じてしまうので、最低限のルールに留めます。
物忘れの兆候が見られるような場合は、物の配置リストを作成してテーブルに貼り付けておくなどの工夫をしても良いでしょう。
そして、ルールの作成には両親の同意を得ることがポイントです。一方的に押しつけたルールは破られる可能性も高くなります。ルールには、以下のような様子を入れておくと、家の清潔さをより保ちやすくなるでしょう。
物を増やさない
家の中に物をこれ以上増やさない、増やす場合には代わりに何かを減らすようにするか、親族の誰かに相談するといったルールを設けましょう。
収納スペースをあらかじめ決めておき、そこに入る量に留めておくといったわかりやすいルールを作成するのもおすすめです。
それでも、旅行好きや収集癖がある両親の場合は、物が増えていくのを止められない可能性があります。そういった場合は、実家の部屋を1つコレクションを置くためのスペースにするというように、散らからないように物を置く場所を集中させる工夫をすることで対策をしていきましょう。
掃除を習慣化する
子供の独立などで住人が減ることで人目を気にしなくなり、掃除が疎かになってしまうことも考えられます。散らからないように掃除については習慣化してもらいましょう。
こちらについても、家全体の掃除は大変なので、自分たちがよく使うリビングや、食べ終わった後の食器や調理用の器具、シンクタンクの現状維持をしてもらうと守りやすいです。近くに住んでいるなら、月に何度か訪問して、両親では届かない場所の掃除をする機会を設けても良いでしょう。
定期的にチェックしサポートする
高齢になるとどうしても記憶力や判断力の低下は避けられませんので、周囲による適切なサポートが必要になります。
定期的にチェックしていち早く予兆に気づくことが、ゴミ屋敷化を防ぐもっとも有効な手段です。次のような状態はゴミ屋敷化への予兆なので、引っかかる箇所があれば注意するようにしましょう。
- 冷蔵庫の中に賞味期限切れのものが溜まっている
- 開封されない荷物が溜まっている
- ゴミが捨てずに放置されている
- 床に物が散乱している
- 段ボールや袋、割り箸などの消耗品が大量にストックされている
この他にも、普段と変わった行動を取っていたらそれが予兆である可能性があります。定期的な訪問が難しければ電話でも良いので、両親の様子をこまめに気に掛けてあげてください。
まとめ
実家を片付けるのに何よりも大切なのは、両親とのコミュニケーションです。どうして片付けるのか、どんな方法を取るのかについてきちんと両親と話し合いましょう。
片付ける際にも一方的に意見を押しつけたり勝手に持ち物を捨てるのはNGです。物を捨てる際にはきちんと了解を得て行うことが、互いの信頼関係を守ることにもつながります。
再発防止を防ぐためのルール作りに加え、日頃から両親のことを気に掛けてコミュニケーションをとることが、実家がゴミ屋敷になるのを防ぐための1番有効な方法です。