近年、高齢者の孤独死が社会問題になっています。親をはじめ、身近な人が孤独死をしてしまったあと、遺品整理はどのように行えばいいのでしょうか?遺品整理の手順や対処法、また遺品を放棄する場合の手続きの方法について解説します。
親が孤独死してしまたら遺品はどうなる?
核家族の増加や、地域コミュニティの希薄化など、高齢者が孤立しやすいのが今の社会の現状です。孤独死とは、内閣府の高齢社会白書によれば『誰にも看取られることなく息を引き取り、長い期間放置されるような孤立死』と示されています。
離れて暮らす親の訃報が、ある日突然警察から知らされる…そんなことが増えているようです。万が一親が孤独死をしてしまった場合、手続きや葬儀などやることが山のようにあります。
特に、多くの人が悩む問題の1つに遺品整理が挙げられますが、遺品はどのようにその後扱うべきなのかをまずは見ていきましょう。
法定相続人に遺品整理の義務がある
法定相続人とは、民法で定められている相続人の順位のことです。人が亡くなった時、その遺品整理は相続人が行うことになります。
なお相続人の順位は、次の通りです。
- 第一順位の相続人…故人の子供と配偶者。どちらも亡くなっていた場合は直系卑属(孫・ひ孫)が相続人になる
- 第二順位の相続人…直系尊属(親・祖父母等)
- 第三順位の相続…兄弟姉妹とその配偶者
近年では離婚や、子を持たないまま亡くなる人が増えており、相続人は複雑化する傾向にあるようです。
拒否する場合、相続放棄が必要
相続するものが有益な財産とは限りません。借金や二束三文の土地など、明らかに相続することでデメリットしかないものもあります。
そうした相続を拒否をする場合は、相続放棄の手続きが必要です。相続を放棄すると、法定相続人の順位に従って次の順位に相続権が移行されます。
ただし、相続放棄は親族間でトラブルに発展するケースが多いので注意してください。
相続人がいなければ行政が処分
相続人が現れなければ、遺品や遺産は法律上法人扱いとなり、『相続財産管理人』が選定され、さらに相続人が捜索されることになります。
それでも相続人が見つからなければ、財産は最終的には国庫に帰属することとなり、行政が処分することになるようです。
相続放棄の手順と注意
故人の遺品・遺産を受け取らないことを決めたなら、手続きを取って相続権を放棄しましょう。そうしないと、法律に従って遺品整理の役目を担うことになります。
相続放棄の手続きと注意点について、詳しく見ていきましょう。
家庭裁判所に届け出が必要
相続放棄するためには、故人の住民票に記載された住所を管轄する家庭裁判所に届出をする必要があります。届出の際には次のものが必要です。
- 相続放棄申述書
- 故人の死亡の記載がある戸籍謄本
- 故人の戸籍附票または住民票除票
- 届出を出す本人の戸籍謄本
- 800円分の収入印紙
- 郵便切手1000円程度(金額は家庭裁判所によって異なる)
これらの書類を揃えて、家庭裁判所に提出しましょう。相続放棄が認められると、家庭裁判所から『相続放棄申述受理通知書』が送られてきます。
届け出の期限がある
相続放棄はいつでもできるというわけではありません。民法第915条に「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」と定められています。
この期間を『熟慮期間』と言い、これを過ぎてしまうと相続放棄は難しくなることは覚えておきましょう。
例外として、相続放棄は『相当の理由』があると裁判所が判断すれば、3カ月を過ぎていても認められるケースがあります。故人の死や遺産状況を知ったのが死後3カ月以上経っているというケースです。
ただし、必ず認められるわけではありません。原則相続放棄をするなら3カ月以内に済ませ、万が一その期間を過ぎてしまったら、速やかに専門家への相談をおすすめします。
遺品の処分を行うと放棄できなくなる
相続放棄手続きをする前に、遺品の処分を行った場合は相続を承認したと見なされるので、相続放棄ができなくなることは覚えておきましょう。
ただし片付けの一環として、客観的に無価値と判断されるものを処分しても、相続財産の処分とは見なされません。もし相続放棄を行う前に遺品整理をするなら、何を処分したのかを可能な限り明確に記録しておきましょう。
相続放棄時に法律トラブルを避けるには?
相続放棄時には、しばしば法律的なトラブルに発展することがあります。特に、賃貸物件で孤独死をした場合には注意が必要です。
注意点について解説しますので参考にしてください。
遺品整理や清掃は行わない
賃貸物件で孤独死をした故人の遺品整理や清掃は、しない方が無難です。というのも前述したように、遺品整理を行うと相続を承認したと見なされて、賃貸物件の管理会社や家主とトラブルに発展する可能性があるからです。
相続を承認してしまうと、例えば賃貸物件の原状回復や、滞納している家賃の支払い、部屋があまりに汚れていたり、人が亡くなった部屋として評判が落ち、家賃を下げざるを得なくなった場合などには損害賠償を請求される恐れがあります。
相続放棄したら費用を払う義務はない
相続放棄の手続きが完了したら、故人の部屋を管理していた会社や大家から原状回復費用や家賃の支払いを求められたとしても支払う必要はありません。
あまりに請求がしつこいようであれば、専門家への相談を考えましょう。
困ったら弁護士などに相談
遺産相続に関しては、親族との相談や賃貸物件の管理人から請求など、葬儀や死亡届などの準備に合わせて様々なことを行わなければなりません。
遺品整理もそうですが、素人判断で手を出すと法的に取り返しがつかなくなるケースが潜んでいます。
そのため、故人の死からある程度の整理が終わるまでは弁護士などの専門家に、何かあれば判断を仰げる体制を作っておきましょう。後から相談した時点ですでに手遅れというケースも少なくはないようです。
遺品整理業者の利用も検討
遺品があまりに多い場合や、骨董品などが含まれていて処分が難しい場合もあるでしょう。
そういった時は、遺品整理業者の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
遺品整理士がいる業者を選ぶ
片付け業者や清掃業者の中には、葬儀の手配から遺品の処分を引き受けている事業者もあります。特に『遺品整理士』がいる業者を選ぶと、話はスムーズに進むでしょう。
遺品整理士とは遺品に関する法知識を学び、廃棄品やリサイクル品、骨董品などを正しく処分するための知識や段取りを正しく学んでいるという資格です。遺族の意思を汲んで、形見分けや残す遺品についても正しい知識で行ってくれます。
料金を確認する
現在、片付けや遺品整理を行う業者は多くあり、その中には自治体からの認可を受けていない業者や、法外な料金を取ろうとする悪徳業者が混じっています。業者に依頼する場合はこういった業者を避けなければなりません。
そのためには、複数の業者から見積もりをとることをおすすめします。明らかに見積もり費用に差がある業者や他と比べて項目に不明瞭な点がある業者は、候補から弾きましょう。業者にわからない点を問い合わせ、その対応を見て決めるのも良い方法です。
まとめ
孤独死する高齢者は年々増加していて、現在かなりの割合にのぼっています。親ではなくても、親戚まで考えると遺産相続という問題に当たるケースは、十分に考えられるでしょう。遺品整理や放棄には様々な法律的な要素が関わってくるので、慎重にしなければいけません。
親戚や賃貸物件の管理人などとトラブルにならないよう、専門家への相談や、遺品整理のプロへの依頼も考えましょう。関係者や専門家と相談し、できうる限り後悔しないよう、手続きを進めていくことが重要です。