身内が亡くなった後の遺品整理は、どのような手順で行うべきでしょうか?個人で行う場合と、業者に依頼する場合の注意点や進め方のポイントについて解説します。親族や業者とのトラブルを事前に回避し、スムーズに進めていきましょう。
目次
遺品整理とは何か?タイミングなど
身内が亡くなった後は『遺品整理』が必要です。単なる不要品処分とは異なるため、やや難しく感じるかもしれません。遺品整理をスムーズに進めていくポイントを説明します。
ただ遺品を廃棄するだけではない
『遺品整理』とは、故人が所有していた全ての動産物を整理し、部屋の清掃をして原状回復させるところまでが含まれます。
家電や家具、車などの大型のものは、買取や処分を検討し、不動産や通帳、印鑑などの価値のあるものは身内・親族間でどう相続するか話し合います。水道・電気・ガス・電話などのライフラインは、支払いを完了させ、解約手続きを済ませなければなりません。
また故人がゴミをため込んでいた場合や、自宅で亡くなった場合は、部屋がひどく汚れている可能性があるので、『特殊清掃』が必要になるケースもあるでしょう。
遺品整理は、単なる不要品処分とは異なり、故人が大切にしていた1つ1つの物に向き合い、心を込めて片づけるといった意味があります。場合によっては、親族や親しかった友人などが集まり、思い出に浸りながら『形見分け』を行うこともあります。
相続に関わるものは早めに整理する
遺品には『相続に関わるもの』が含まれています。個人が勝手に処分をしてしまうと、親族間でのトラブルに発展することがあるので注意して下さい。相続に関わるものは、さまざまな手続き等が発生するので早めに整理するのが理想でしょう。
一般的には、親族や知人が集まった四十九日の法要の際に、形見分けや話し合いを行うことが多いようです。遺族は、この時までに『確実に処分するもの』と『そうでないもの』に仕分けをしておかなければなりません。
土地、家屋、現金、貴金属などの資産価値のあるものには『贈与税』や『相続税』がかかることがあります。形見分けをする前に、遺品の金額や資産価値をしっかりと調べておくようにしましょう。
『相続すべきもの』の処理が済めば、その後の片付けは業者にお任せするなど、比較的スムーズに整理が進みます。
遺品整理は誰が行うのか
遺品整理は、体力、気力ともに消費する大変な作業です。物が多ければ多いほど時間もかかるため、なかなか思うように進まないかもしれません。親族の助けを借りて『遺族が自力で行う』か『業者に代行を依頼する』の2つの選択肢があります。
遺族が自力で行う
「遺品整理は誰が行うのか」に明確な決まりはありませんが、昔から「身内で済ませるもの」と考えられてきたため、現在も遺族が自力で行うケースが多いです。
故人の部屋が自宅にある場合は、自分たちのペースで行って構いませんが、もし賃貸で1人暮らしをしていた場合は、『契約満了日』を念頭においた早急な対応が求められます。
はじめての遺品整理で分からないことも沢山あるでしょう。スムーズに進めるために、事前の情報収集と計画はしっかりと行って下さい。
トラブルを避けるため事前に話し合っておく
遺族のみで遺品整理を行う場合、親族間のトラブルを避けるため、必要なことは事前に話し合っておきます。
『相続に関すること』や『形見分け』については、トラブルが非常に多いです。後になって「それは自分がもらうものだった」といわれないようにしましょう。
四十九日の法要のときに全員で話し合うのが好ましいですが、もし参加できない人がいた場合は、処理・処分方法について、きちんと了承を得ておいて下さい。
故人が遺言状を残していれば、それは法的な効力を発揮することになるので、見落とさないように注意しなければなりません。
目的に合った遺品整理業者に依頼する
故人が賃貸物件に住んでいた場合は、早急な片づけが必要になりますが、慣れていない人ではどこから手をつけていいか迷ってしまうでしょう。また、高齢でなかなか片付けができない人も少なくありません。
このように、遺品整理を個人のみで行うのが難しい場合は、目的に合った遺品整理業者に依頼する手もあります。
仕分けの段階から業者に任せることもでき、処分や買取のみのお願いも可能です。経験のある業者は、仏壇の『魂抜き供養』や、汚れた部屋の『特殊清掃』などもしっかりと行ってくれます。
業者に依頼する際は「どうしたいか」という遺族側の意向をしっかり伝え、必ず訪問見積もりをとるようにして下さい。
遺品整理の準備
遺品整理は段取りをしっかり立てて進めることが大切です。遺品整理の準備の段階で用意しておきたいものや、前もってやっておくべきことを解説します。
仕分け用の箱や手袋などを用意
遺品整理の大部分は、仕分けや片付けです。体力的にも大変な作業となりますので、動きやすく汚れてもよい服装で行いましょう。あると便利なものは以下です。
- 軍手・マスク・掃除用具
- 段ボール・ガムテープ・紐
- 各自治体指定のゴミ袋
- カメラ・スマートフォン
遺品整理は、大枠で『いるもの』と『いらないもの』に仕分けし、そこからさらに細かく分けていきます。段ボールや荷紐は、物を仕分けたり、処分したりする際に使うものです。
いらないものは、各自治体のゴミ袋に分けて処分します。粗大ごみは予約制(有料)となるケースがほとんどで、内容物によってゴミの収集日が異なります。
また、写真は場所の状況や、物品の状態などを示す証拠となります。業者とのトラブルや、親族間の相続トラブルが発生したとき「あのとき写真を撮っていれば…」とならないように、貴重品や壊れやすいものなどはカメラに収めておきましょう。
故人や遺族の希望を確認する
遺品整理の基本は、『残すもの』と『処分するもの』、そして今すぐに決められない『保留』に大まかに分けていくことです。仕分けは個人の判断ではなく、故人、遺族・親族の希望を確認しながら行います。
故人の希望については、エンディングノートや遺言に、相続や形見分けについての記載がないかを確認しましょう。
価値のある全ての動産物は、『相続の対象』になります。自分勝手に処分せずに、遺族・親族間で話し合いをしながら進めて下さい。
写真に撮ってデータで残す手も
故人の思い出が沢山詰まったものは、処分するのに忍びないですね。物が多すぎては、引き取りきれないので、最終的には処分や買取をしてもらうことになるでしょう。
思い出の品は処分する前に、写真に撮ってデータ化する方法もあります。こうすれば、いつでも写真を見て思い出すことができます。
遺品整理の方法
準備が完了したら、早速遺品整理にとりかかりましょう。効率よく遺品整理を進めていくには、段取りに従うことが大切です。
まず思い出の品や貴重品を見つける
まずは第1ステップとして『思い出の品』や『貴重品』を探す作業をします。
前もって『必ず見つけておきたいものリスト』を作成しておくとよいでしょう。探し出した物品は、段ボールに入れ『形見品』や『貴重品』と書いた紙を貼っておきます。
- 銀行の預金通帳・印鑑
- 不動産関連書類
- 有価証券・金融資産の書類
- 宝石・貴金属類
- 現金・商品券
- 骨董品・コレクション類
- 借金に関する書類・覚書
- 保険関連の契約書
- 年金関連の書類
もしも探している貴重品がどうしても見つからない場合は、遺品整理の専門業者にお願いする手もあります。
形見分けを行う場合もある
ピックアップしておいた思い出の品は『形見分け』で親族や友人の手に渡ることがあります。
対象となるのは、貴金属、時計、書籍、衣類などさまざまで、故人が愛用していたものを手元に置き、いつまでも故人を思いしのぶという意味があります。
しかし、あまりにも高価なものは、贈与税の対象となる場合があるため注意が必要です。受け取る側も負担となってしまうため、物品の価値を調べ、高価なものは形見分けの対象から外すなどの配慮が必要です。
昔は『目上の人には贈るのは失礼にあたる』という形見分けのしきたりが存在していました。現在も、しきたりを重視する人がいますので、マナー違反とされないように前もって相手に相談することをおすすめします。
遺品は、白い無地の紙で包み、『偲び草』や『遺品』と書いて、直接お渡しして下さい。
不要品を分別
次に行うのが『不要品』の分別です。不要品には、大型の家電から車、エアコン、小物や食器類、供養が必要な人形など、実にさまざまな種類があります。
まずはどんなものがあるかリストアップしてみましょう。そして、『リサイクル可能なもの』と『処分するもの』に分けてみて下さい。
リサイクルや売却など、適切に処分する
『リサイクル可能なもの』は、付属の説明書や部品などをまとめて箱に入れておきます。寸法、メーカー、年代も記載しておくと、買い取ってもらうときの手間が省けます。
昔の着物や帯なども、買い取ってもらえる可能性が高いため、ほこりが被らないように保管しておきましょう。
一方、『不要なもの』は廃棄処分となりますので、自治体のルールに合わせたゴミの分別を行っていきます。粗大ごみは、予約制の有料となることが多く、車などは廃車の手続きが必要となります。
また、エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機の家電品目は、『家電リサイクル法』に基づき、自分で処分せずに、購入した販売店や製造メーカー、または特定の引き取り場所にもっていかなければなりません。
処分や売却にはさまざまなルールがあり、やや面倒に感じるかもしれませんが、段取りをして1つずつ行っていきましょう。
遺品整理の注意点
遺品整理は、お金にまつわるトラブルが多く発生しやすいのをご存じですか?具体的な例を挙げながら、遺品整理の注意点を解説します。
お金にまつわるトラブルに注意
まず1つ目のお金に関するトラブルは、親族間での『相続』にまつわることです。
金融資産や土地などの価値のある相続はもちろんですが、債務の借金や、損害賠償、慰謝料など『負の遺産』も引き継がれることになるので注意しましょう。
誰が相続するのかで揉め、長期化すればするほどお互いの溝が深まりますので、遺品整理士、行政書士、弁護士などのプロを交えて進めていくのがベストです。
大切な遺品を安く買い取られるケースも
2つ目は、遺族と業者間でのトラブルです。
遺品整理業者を依頼した際に、見積もり以上の金額を請求されたり、リサイクル業者や不要品回収業者に、大切な遺品を安く買い取られるケースがあります。
また、残念ながら、高価な遺品を勝手に持ち出す、回収したゴミを不法投棄するなどモラルに反した行為をする『悪徳業者』も横行しています。
こうしたトラブルに合わないためには、『業者選び』が重要といえるでしょう。
業者に遺品整理を頼む場合の費用は?
遺品整理の費用は、部屋の広さ、物の量、自治体ごとのゴミ処理料などによって決まります。悪徳業者に騙されないためにも、遺品整理を行う際のおおよその相場を把握しておくことが大切です。
部屋の広さで異なる
遺品整理の費用の基準となるのが『部屋の広さ』です。
1K・1R | 3万5000円〜13万円 |
1DK | 3万5000円〜15万円 |
1LDK・2DK | 6万円〜28万円 |
部屋が広くなればなるほど費用も高くなるといえます。しかし、同じ部屋の大きさでも金額に随分差があるのに気づくでしょう。
たとえば、同じ1DKでも、故人がゴミや物を捨てずにため続けていた場合は、片付けにかかる人数や時間も増えます。
床や天井が汚れ、特殊清掃が必要な場合は、さらに追加料金がかかることも想定しておきましょう。
事前に追加料金も確認しておこう
見積もりをとった際は、料金設定の明細を確認しておきます。特殊清掃やハウスクリーニングなど、基本の料金以外の『追加料金』についても聞きましょう。
電話やインターネットでの見積もりでは、業者側も正確な作業量が把握できません。そのため、当日になって大幅な追加料金がかかることが懸念されます。必ず『訪問見積もり』という形で、できるだけ正確な料金を出してもらうようにして下さい。
費用を抑えるには?
遺品整理の全てを自力で行えば、費用は最小限で済みます。しかし、時間や体力を考慮すると、自力では難しいと考える人も多いです。業者を利用しながら、費用を抑える方法について考えてみましょう。
自分である程度片付けてから依頼する
遺品整理を業者に依頼した際、片付けるものが少なければ、作業人員は1人または2人と少なくて済みます。
さらに、ある程度仕分けがなされていれば、作業時間も短縮できるでしょう。つまり、できるだけ自分で仕分けや片付けを行っておけば、費用は抑えられるということです。
たとえば、事前に遺族側で不要品を廃棄しておいたり、家電や家具はリサイクルショップで売ったりして部屋にあるものを減らしましょう。
自治体のゴミ回収は無料または安い費用で引き取ってくれるので、これを使わない手はありません。
数社から見積もりを取ろう
1社だけでなく、2社、3社と複数から見積もりをとり、それぞれの費用やサービスを比較しましょう。
このような『相見積もり』をすることで、提示された価格が適正であるかが分かります。また、担当者の対応から、仕事の迅速さや誠実さなども分かるでしょう。
遺品整理の業者の選び方
高齢化に伴い、遺品処理業者のニーズがどんどん高まっています。しかし中には、モラルのない『悪徳業者』も存在します。よい遺品処理業者の選び方のポイントを解説します。
事情を細かく確認してくれる優良な業者を
優良な遺品整理業者は、「遺品をどう整理・処理したいか」という細かな要望を聞き、分からないことがあれば相談にのってくれます。
「思い出の品や人形は丁寧に処理して欲しい」「パソコンなどは情報の漏洩がないように廃棄したい」といった声もあるでしょう。
事前にこういった要望に耳を傾け、事情を細かく説明・確認してくれるのが理想といえます。
また、見積もりの内訳が明記されておらず、説明が伴っていない場合は、悪徳業者の可能性が高いです。こちらが詳細を聞く前に、丁寧に説明してくれるかどうかの姿勢もみましょう。
契約を急ぐ業者には注意
悪徳業者は『契約を急ぐ』という特徴があります。『激安』や『最低〇〇円~』という曖昧な表示で気をひき、都合の悪いことや料金の詳細を聞かれる前に、急いで契約にもっていこうとします。
「料金の説明を納得するまでしてくれるか」や「遺族の心情をくみ取る対応をしているか」は優良業者を見分けるポイントでしょう。
有資格か、会社情報や口コミは問題ないか
業者に依頼する前に、公式HPに会社情報・料金・サービス内容がしっかりと記載されているか、悪い口コミがないかを確認するようにして下さい。
また、『遺品整理士』の資格を有しているかどうかも重要です。この資格は、遺品整理士認定協会が認定する民間の資格ですが、悪徳業者などの『モラルの低下を是正』することを基本理念に掲げています。
そのため、この資格を有している人や協会に加盟している業者は、信頼度が高いといえるでしょう。
まとめ
遺品整理は、自力で行うことが可能です。しかし、家族が亡くなった後は、なかなか気が進まず、形見分けや処理のタイミングなどを逃してしまうこともあるでしょう。
何かと分かりづらい作業が多いですが、先延ばしにせず、自分でできないところは業者に依頼するなどして、スピーディーに進めていきましょう。