両親が高齢になり、住まいも別の場合には、万が一の時に備えてあらかじめ準備をしておくことが大切です。困った時に力強い味方となってくれる『特殊清掃』について、具体的な業務内容から利用料の相場までポイントを絞って説明します。
特殊清掃が必要になるケース
まずは、特殊清掃が必要となるケースについて、具体的に説明していきます。
特殊清掃とは
『特殊清掃』とは、孤独死や孤立死または事件や事故、自殺などが発生した現場において、居室に残る遺体の痕跡を取り除き、原状回復を図る清掃サービスです。
孤独死や事故が発生した現場では遺体の発見が遅れることが多く、腐敗または外傷などによって漏出した体液や血液が、居室に染み込み異臭が充満した状態になりがちです。そのような状態から居室の原状回復を図る清掃サービスが、特殊清掃です。
孤独死で遺体発見まで時間が経過している
具体的に特殊清掃が必要なケースを見ていきましょう。まず、孤独死で遺体発見まで時間が経過している場合には特殊清掃が必要になります。夏では約3日間、冬では約1週間経過すると遺体の腐敗が進み悪臭が発生します。
費用などの面から、遺族が独力で清掃を行おうとする場面が見受けられますが、遺体から漏出した体液や悪臭の処理には特殊な技術と大変な労力が必要になるので、無理をせずなるべく特殊清掃業者に依頼するようにしましょう。
自殺や事故、火災で亡くなった場合
また、自殺や事故の際にも特殊清掃を依頼しましょう。この場合、腐敗が始まる前に遺体を発見できたとしても、遺族が清掃を行うにはとても大きな精神的負担がかかることになります。心労から精神疾患などを患わないためにも、特殊清掃を依頼して精神的負担を軽減することが懸命だと考えられます。
加えて、死亡者が出た火災現場にも特殊清掃を依頼するべきでしょう。火災のあった場所は、独特の『火災臭』がなかなか消えません。近隣への悪臭被害が広まってしまう可能性も考えられるので、火災現場に対応した特殊清掃業者に依頼して徹底的に煤の除去や脱臭を行ってもらいましょう。
特殊清掃の作業内容
次に、特殊清掃の具体的な作業内容について見ていきましょう。
汚物の除去と汚れた家具などの処分
遺体が腐敗した現場では、居室に汚物や体液が広がり、いたるところに汚物が染み付いています。このような汚物を特殊な洗浄液や工具などを駆使して除去するのが特殊清掃です。
また、汚れが付着し悪臭が漂うようになってしまった家具などの処分も、特殊清掃で引き受けてもらえます。このような家具は一般の廃棄物とは異なり、体液や悪臭が広がるのを防ぎながら搬出する必要があります。
加えて、汚れや臭いの付着がなかった家具を買い取り、リサイクルを行う業者もあります。
消臭と消毒、害虫の駆除
汚れの除去にとどまらず、消臭や消毒を行うのも特殊清掃の業務の一つです。遺体から発生する悪臭は、亡くなった人の体型や体質によって大きく異なります。
たとえば、肥満体型の方が亡くなった際には漏出した脂肪の油から強烈な悪臭が発生したり、病気を患った方が亡くなった際には病原菌などが原因で異様な臭いを発生させたりします。さまざまな臭いを対処してきた経験のある特殊清掃業者だからこそ、これらの悪臭を除去することが可能になるのです。
加えて、害虫の駆除も行ってくれます。遺体発見が早くとも、蛆虫やハエなどが大量発生し室内が黒一色になることも稀ではありません。感染症の伝染や近隣への影響を抑えるためにも、徹底的に害虫の駆除を行う必要があります。
特殊清掃の料金の目安
ここからは実際に特殊清掃を依頼するとなった場合、どの程度の料金がかかるのかを見ていきましょう。
特殊清掃の相場と料金表
作業内容 | 料金 |
床上の特殊清掃 | 3万円~ |
浴室清掃 | 3万円~ |
消臭剤・除菌剤の散布 | 1万円~ |
汚れた畳の撤去 | 1枚:3000円~ |
オゾン脱臭 | 1日:3万円~ |
作業員の人件費 | 2万円~ |
特殊清掃は、部屋の広さや間取り、荷物の量や遺体発見までの日数など料金の変動要因が多く、一概に料金相場を出すのが難しいサービスです。
中でも、最も料金が変動する要因の一つが、体液がフローリングやコンクリートまで染み込んでいるか否かです。染み込んでしまっている場合には、基礎部分やフローリングの張り替えなどの作業が必要になってくる場合があり、料金が跳ね上がってしまいます。
遺体発見までの日数や体型の違いで差がある
遺体発見までの日数や亡くなった方の体型の違いでも料金が変動します。早期に発見することができれば、体液の漏出や悪臭の発生も小規模になり費用を抑えることが可能でしょう。また、上記のように体型によって体液や悪臭の度合いも変わってくるため処理の内容もそれぞれ異なり、その分料金も変動します。
遺品整理をする場合の料金
また、遺品整理を依頼するか否かでも料金が変動します。特殊清掃のみでは悪臭を完全に除去することができません。臭いの染み込んだ家具を処理してやっとほぼ完全に除去することができます。遺品整理まで業者に依頼する場合大きく料金は変動しますが、下記を参考に検討してみてください。
項目 | 料金 |
死臭消臭(特殊清掃+遺品整理) | 8万5000円~130万円(消費税別) |
特殊清掃業者選びのポイント
実際に特殊清掃業者を依頼する際に、どのような業者を選べば良いでしょうか?以下ではそのポイントを説明します。
経験と実績がある業者を選ぶ
これまで述べてきたように、遺体が発見されるまでの時間や季節、亡くなった方の体型や体質などによって現場の状況は大きく異なるため、業者がどれだけ多くの現場を経験してきたのかが仕事の質に直結します。経験の浅い業者では対応できない現場でも、多くの現場をこなしてきた業者だからこそ処理できる場合が確実に存在します。
実績のある業者は、ホームページなどで過去の事例を紹介し、具体的な料金の金額を記載している場合もあります。そういった情報を確認して、確かな実績と経験を持つ業者を選ぶようにしましょう。
消臭に注力している業者
また、業者が消臭に注力しているかどうかも確認しましょう。遺族が最後まで最も悩まされる問題の1つが、臭いです。遺体から発生した強烈な臭いは1度染み付いてしまうとなかなか除去することができないのです。上記のようにホームページなどで業者が大切にしている考えや具体的な処理過程の情報を見ることができることもありますので、確認してみましょう。
自治体で必要な許可を取得している業者
家具など一般廃棄物(※)にあたる家庭ゴミを回収するには、『一般廃棄物収集運搬業許可』が必要となります。しかし、この許可を得ている業者は限られています。もし、許可を得ていない業者に廃棄物処理を依頼してしまうと不法投棄になるケースも考えられますので、業者が許可を取得しているかどうかをあらかじめ確認しましょう。
また、遺品の買取・リサイクルを行うには『古物商許可』を取得する必要があります。遺品の買取までお願いする場合には、ホームページであらかじめ古物商許可番号が記載されているかどうかを確認するようにしましょう。
(※一般廃棄物とは、慈善事業に伴って生じた廃棄物(=産業廃棄物)以外の廃棄物のことを指す法律で定められた言葉です)
まとめ
万が一の時に備えてあらかじめ準備しておくことは、いざという時に慌てないためにも大切なことです。確かな実績と経験を持ち、資格を保有している特殊清掃業者を探し、あらかじめ万全な体制を整えておきましょう。