身辺整理はこれまでの人生で溜まった、不要な物事を処分してすっきりとし、新しいスタートを切るための準備です。自分のためであり、残された家族が困らないようにするためでもあります。そんな身辺整理の方法や片付け業者の選び方までを解説します。
目次
身辺整理とは具体的に何をするのか
身辺整理とは具体的にどのようなことをするのか、具体的な方法や行うのに適した時期などについてみていきましょう。
身の回りの物を整理する
毎日の生活の忙しさの中で、気づけば多くの物に囲まれて人間は生きています。
長く生きているとそれだけ物は増え、片付けようと思ってもなかなか行動に移せないでいる人や、片付けに疲れてしまったという人も多いでしょう。
まずは身の回りにある物の整理から始めていきましょう。シンプルに言うと『必要な物だけを残して、いらない物を処分する』ことです。
いらない物の中には、他人に見られたくないものも含まれています。それらを処分することより片付けが楽になり、快適に過ごせるようになります。新しい人生のスタートを切ることができるようになるのです。
終活の一環である身辺整理は、『前向きな片づけ』と表現することができます。
身辺整理を行う時期は?
身辺整理を始めるなら、体力や気力のあるうち、思い立った時がおすすめです。
あまり高齢になり過ぎると、身体的にどうしても衰えてきます。高いところに仕舞った物などを取り出すことは危険も伴います。
また、「大丈夫」と思っていても、記憶力や脳の衰えなども起こってきます。『自分で動けて考えられる時期』に行うのが一番です。
40代から少しずつ、定年退職後など
身辺整理を始めるにはまだ、少し早いのでは?と思うかもしれませんが、『40代から身辺整理を行うこと』が体力的、精神的にも充実しているためおすすめです。
現在の日本の平均寿命は80歳代です。40代は折り返し地点ということから、ひとつの節目とも考えられ、慌てずに少しずつ始められるというメリットもあります。
また、定年退職後も身辺整理のタイミングとしてふさわしいと言えるでしょう。結婚や転職、子どもの独立など人生の転機の時にも同じことが言えます。
自分の立ち位置や環境が大きく変わる時が身辺整理のチャンスです。
身辺整理を行うメリット
身辺整理を行うことで、次のようなメリットがあります。
家族の負担を軽減する
誰にでも死は訪れるものですが、残された遺族には故人の遺品整理という作業が待っています。そしてこれは想像以上に『大がかりで大変な作業』であると言われています。
必要な書類がどこにあるのかわからず苦労を掛けてしまったり、無用なトラブルに巻き込まれてしまったりすることがあるかもしれません。
身辺整理を行っておくことで、家族の負担を大幅に軽減することができるのです。一人で作業するのが大変であれば、家族と相談しながら協力しあって進めていくのもおすすめです。
思い出と向き合うことができる
身辺整理をすることは、これまでの人生を振り返り、大切な思い出と向き合う作業でもあります。思い出が記録されている物の代表として写真がありますが、すべての写真を取っておいては膨大な量になってしまいます。
遺影に使ってほしい写真、自分が最期を迎えたときに棺に一緒に収めてほしい写真なども選び、残された家族にわかるようにしておきましょう。
また、写真に限らず子どもとの思い出の品など『死んだ後も、取っておいてほしい』というものだけを残すようにしましょう。
身辺整理の計画を立てよう
では、実際に身辺整理を始めていきましょう。まずは紙とペンを用意してください。書きながら行うことで、気持ちも整理しやすくなります。
持ち物を書きだし、手順を決める
次のような手順で、紙やノートに書き進めていきましょう。
- 自分の身の回りにある物たちをリストアップしていく(ジャンル別に分けて書く)
- 必要なものと要らないものに分ける
- 要らないものの処分方法について書く
- 必要なものの保管場所を書く
持ち物についてはこのようになりますが、必要なのか要らないのか判断しかねるものなどについても、あらかじめ書いておくとよいでしょう。
作業を進めていくうちに処分の方向が決まる場合もあります。
エンディングノートの活用もおすすめ
『エンディングノート』とは、人生の最期(エンディング)を想定して書かれる、残された人へ宛てたノートです。
死後の行動に困らないように、伝えておきたいことを生前に書いておくのですが、特別なルールはなく書き方は自由です。
- 自分の情報:名前や生年月日・血型・住所・電話・既往歴など
- 親戚・友人・知人のリスト:連絡先・メールアドレス・関係性など
- 財産系の情報:預貯金・株式・不動産・クレジットカードなど
- 保険・年金:保険会社名・保険証券番号・プラン内容など
このような大まかな情報の他、片身分けのリストや死後に契約を解除してほしいもの(携帯・プロバイダーなど)、介護や延命治療の希望の有無についても書いておきます。自分史を書き添えるのもよいでしょう。
ただし、財産系のことについては、相続が関係してくるため、次に詳しく紹介します。
資産の整理の方法
ここでは、資産整理の仕方を説明します。
財産関係の書類はファイルにまとめる
預貯金や株券・土地・家屋などの財産については、残された家族があとから見てもわかりやすいように、ファイルにまとめておくことが大切です。
その内容はできるだけ具体的に書くことが必要です。
不要な株券などがある場合には、早めに売却や処分などの手続きを行っておきましょう。所有者本人でなければできない手続きも多いので、トラブルにつながらないように早めの対策をおすすめします。
また、資産を家族に残したいという場合は相続にあたります。ファイルやエンディングノートだけでは法的な効力がありませんので、『遺言書』に別途記載が必要です。
マイナス資産の書類も分かりやすく整理
資産は家族に分け与えることのできるプラスの財産だけとは限りません。
相続を受けるならば、故人のローンなどのマイナス資産について知らないとトラブルの原因になります。マイナス資産の書類こそ、しっかりと引き継いでおかなければならないのです。
書類をわかりやすく整理しておけば、家族がどう対応すればよいのかがわかりやすくなります。
物や思い出の品の整理の方法
不用品だとハッキリわかるものは処分できても、さまざまな思い出や思い入れのある物については、残された家族に引き継いで行きたいと思うこともあります。
もらってくれる人がいる場合には形見分けとして残し、いない場合には処分やリサイクルを考えます。
目に見えるものではない、デジタルデータの整理も忘れてはなりません。
形見分けする物を整理
近親者や親しかった人に自分の愛用品を差し上げることを『形見分け』と言います。
貴金属や骨とう品や美術品など、高価なものは贈与税の対象になる可能性もあるので注意が必要です。財産や相続に関してわからないことがあるときには行政書士・司法書士・弁護士・税理士などの専門家に相談してみるのもよいでしょう。
そのうえで、差し上げたときに本当に喜んでいただけるものをわかりやすくリスト化しておきます。
そして、形見分けを渡す時期は、宗派によって次のように異なるので覚えておきましょう。
- 仏式:四十九日忌明け
- 神道:五十日祭
- キリスト教:亡くなって1カ月後に行われる追悼ミサの時
これらのことを踏まえた上で、誰に何をあげるのかをリストしておきましょう。
不要品を分別しリサイクルに出すか処分する
まわりに物が多い人は注意が必要です。いざという時に必要なものが見つからない可能性が高まるからです。
まずは要らないものを分別することから始めましょう。使わないものは思い切って処分してしまうことです。
もったいないという感情が出てきた場合は、まず、それがリサイクルできるものかどうかを判断します。
ブランドものや骨とう品などの場合、リサイクルショップなどで鑑定してもらうほか、オークション、フリマサイトなどで販売するのもおすすめです。
デジタルデータの整理も忘れずに
現代ではパソコンやスマートフォンなどの電子機器を持っている人がほとんどです。
特に大切な写真や動画を始めとするデータや、仕事に関わる重要な書類など引き継ぎたい物については、家族や関係者がわかるように整理しておく必要があります。
画像系はまとめて印刷して保存するか、データの状態で保存したものを信頼のできる人に渡しておくのもよいでしょう。
見られたくない情報に関しては、あらかじめ削除しておくと安心です。
ブログやツイッター、FacebookなどのSNSに関しては、IDとパスワードをメモしておき、自分の死後に交流のあった相手に連絡をしてもらえるようにしておきます。
人付き合いの整理の方法
身辺整理をするにおいて、整理するのはなにも物だけではありません。これまでにかかわってきた人付き合いも見直す時が来たということを意識してみましょう。
プラスの関係かどうか見極めよう
仕事にしてもプライベートにしても、多くの人間がかかわるのが人生です。関わる人間が増えれば増えるほど、物事は複雑になり、他人に振り回されることも多くなります。
その見極めの方法の一つとして、何年も連絡を取っていない人は、思い切って連絡先を削除してしまうことをおすすめします。
SNSでつながっている相手に対しても、コメントを書いたり『いいね!』をしたりするのが煩わしいと感じることがあるのだとしたら、そのままつながりや連絡先を持っていても、まったくプラスの要素につながらない相手だという答えが出ています。
すっきりと関係を断ち、連絡を取らないようにするのです。
心を疲れから解放することが目的
身辺整理をすることによって、身の回りがシンプルで動きやすい環境になっても、人間関係が複雑だと気持ちが休まる暇がありません。
人間関係の整理は精神的な効果が大きく、心の疲れをすっきりと解放できる環境に変えることができる、唯一の方法です。
最終的に幸せで穏やかな状態になるのが目的です。いきなりバッサリと関係を切ってしまうと、トラブルにつながる場合もあるので注意しましょう。
携帯やSNSでの連絡方法をまず絶ち、次に年賀状の返事などを徐々にフェイドアウトしていくなど、緩やかなやり方を選ぶのです。
本当に大切な人を優先する
煩わしい相手や、疎遠になった相手とのつながりを断つことによって、自分にとって大切な人との時間を優先することができるようになります。
それまで世間体や利益にかかわるしがらみなどで、無理や我慢をして付き合っていた相手との時間は、ひとつの経験として終わらせていくのです。
逆にちょっとしたことが原因で連絡をしなくなってしまった親友などには、連絡してみるのもよいでしょう。後悔のないように人付き合いを整理しておきましょう。
自分にとって本当に大切な人は誰なのか、限りある人生を誰となら一緒に過ごしたいのかを確認してみてください。
自分の時間を大切に
身辺整理をしながら人間関係の整理について考え進めていくと、他人軸で生きるのではなく、自分軸で生きることの大切さが見えてきます。
一度きりの自分の人生です。要らないものや人間関係を捨てて、好きなものやときめくもの、大切な相手と付き合いましょう。そして何より自分を大切に考えることです。
やりたくないことはやめて、やりたいことを始めましょう。それが自分の成長にもつながります。
1人でじっくり読書をしたり、趣味に打ち込んでみたりするなど、静かに自分を見つめる時間が取れたら、人づきあいの整理は成功したと言えるでしょう。
身辺整理を業者に頼む場合
身辺整理を始めたいけれど、現状で忙しすぎたり、高齢で体力に自信がなかったりする場合は、思い切って専門の業者に依頼するのもよいでしょう。
自分では対処しきれないくらい物が多い場合や、大型の物を処分したい場合も同様です。
プロが一緒に行うことで負担を軽減
1人黙々と身辺整理を行うのは、体力だけでなく気力がついていかないということもあります。
『不用品回収業者』と呼ばれる片付けのプロの力を借りてみましょう。ただ単に要らないものを処分するためにものを移動するのではなく、
- 必要なものと不用品の仕分け作業
- 不用品の処分
- リサイクルや買取りの手続き
- 片づけた後の清掃作業
ここまでを行ってくれる業者がほとんどです。
特に、不用品の処分に関しては、トラックに乗せて運ぶという大掛かりな作業をしてもらえるので、一気にすっきりとする爽快感を味わえます。まさに掃除のプロなので、身辺整理の進め方に自信がない人の強い味方と言えるでしょう。
業者の選び方
身辺整理に不用品回収業者を利用する人が増えているものの、その料金体系は一律で決まっているわけではありません。中にはお金だけを儲けられればよいと、雑な対応や品物を乱暴に取り扱う業者もいます。
業者を賢く選んで、安心して身辺整理を行えるように選び方のポイントを紹介します。
数社で見積りを行い、高額な悪徳業者に注意
不用品回収といってもその不用品の大きさや量によっては、ちょっとした引っ越しレベル、もしくはそれを超える規模になるということを覚えておきましょう。
使うトラックの大きさや、整理する部屋の広さによって見積もりが違ってくるだけでなく、その業者によって価格設定もさまざまです。
一見とても安く見せておいて、実はたくさんのオプションがついて、後から高額な請求が来て驚いたというケースは少なくありません。
ホームページなどをチェックして数社で見積もりをし、あらかじめ価格を比較しておきましょう。
電話での問い合わせ対応の質もチェック
ネットなどでのリサーチももちろん大切ですが、実際に電話で問い合わせをしてみるのがおすすめです。
不用品を分別する段階から行ってくれるのか、買取はどうか、終わってからの掃除はしてもらえるのかなど、料金だけでない『作業内容なども直接聞いて、対応を見る』のです。
終活ブームにより、生前整理としての不用品回収を専門に行っている業者も増えています。
身辺整理はその人の人生を見つめ直しながら行われる作業ですので、本意ではない対応や納得のいかない料金の業者は利用しないように気を付けましょう。
まとめ
毎日忙しく暮らしているうちに、気づけばあっという間に時間は過ぎてしまいます。「自分の人生とはいったいなんだったのか!?」とふと立ち止まるような『転機』が訪れるとき、それが身辺整理を始めるチャンスです。
決してネガティブな意味ではなく、前を向いて新しいスタートを切りましょう。自分が、より快適に過ごしていくために要らないものを捨て、好きなものを残し、大切な人との時間を増やすのです。
実にシンプルですっきりとした、自分の原点に戻るようなポジティブな行動が身辺整理です。自分1人では作業がうまく進まないこともあるかもしれません。その時にはプロの手も借りながら焦らずに進めていきましょう。