遺品整理は気持ちの整理をつけるためにも大切な作業ですが、実はトラブルに発展するケースが多いのをご存じでしょうか?場合によっては訴えられてしまうこともありますので、遺品整理は慎重に行いましょう。どんなトラブルが多いのか、解決方法なども含めて解説します。
遺品整理時のトラブルは多い
遺品整理にも様々な種類があります。骨董品や美術品などの価値のあるものや、ひょっとしたら借金があるかもしれません。
相続人が複数にいる場合、どのように分与すればよいのかでトラブルになることが少なくありません。まずは、どういったトラブルが起きるのかの概要について把握しておきましょう。
相続人同士のトラブル
相続人だからといって、勝手に物を処分することは許されません。相続人が複数いる場合、全員の合意はあった方が良いでしょう。自分にとっては価値がない場合でも、売却すれば大きな価値になるケースもありますし、形見分けとして欲しいという人もいます。
車や家はどう分割するのかは難しいところなので、これに関しても、話し合わないと深刻なトラブルが起こります。デジタル品で、例えばスマホなどでは中身に価値があることが多く、家電などと一緒に処分するのは控えた方が良さそうです。
また、故人の家に同居していた流れで、そのまま人が住み着いてしまう例もあるようです。この行為も法的にはアウトなため、トラブルの原因になります。
基本的に遺品については、個人の裁量で扱わない方が良いということは覚えておきましょう。
相続放棄に関するトラブル
相続放棄でもトラブルに発展する可能性があります。
よくあるのが、故人が他人から借金している場合や、他人と共同で使用している機材等がある場合です。相続を放棄したとしても先方が納得せず、説得に時間がかかるようなケースもあります。
また、相続放棄に期間があることを知らずに、放棄しようと思っても期間が過ぎてしまっているといったトラブルも多いようです。原則、相続放棄は相続人が決定してから3カ月以内にする必要があり、特殊な例外を除けば以降は不可能になる点には注意しましょう。
遺品に関するトラブル事例
続いては、遺品の扱いで起こったトラブルの事例を紹介します。遺品の扱いは、次に紹介するような事例に注意してみてください。
価値のあるものを勝手に持ち帰った
遺品の中には、宝石や美術品などの価値が高いものもあります。遺品整理を行う前に、こういったものを勝手に持って帰ってしまうといったトラブルが相次いでいるようです。
法律上、価値のある遺品は相続人同士で分配する必要がありますし、遺書に故人の遺志が書かれている可能性もあります。遺品をもらう権利があると主張したとしても、法律上は正式に引き継いでいるわけではないので、窃盗として訴えられてしまう可能性もあるでしょう。
仮にそういった相手が身内にいた場合は、法的手続きを取る、弁護士に相談するなど、相手に対しきちんと返却要請をして、毅然と対応する必要があります。
思い出の品を勝手に処分された
早く家を片付けたいからと、親族の誰かが遺品を勝手に処分してしまうケースもトラブルとして多いようです。故人の書いた絵や手紙、または写真といったものは、たしかに金額的な価値はありませんが、遺族の誰かが欲しがる可能性もあるので、処分は慎重にしたいところです。
価値があるものだと発覚した場合には、賠償請求されることもあります。基本的に、価値・無価値の判断は個人では行わずに、専門家に頼んだ方が良いでしょう。
遺品整理や処分の費用配分
遺品の処分に整理を誰が行うのかの相談も難航することが多いようです。誰が作業をするのか、その場合の費用はどうするのかもデリケートな問題なので、よくよく話し合う必要があります。
特に勝手に業者に依頼を出していたというような場合には、トラブルに発展しやすい傾向があります。
業者が勝手に遺品整理をした場合、それが専門家であったとしても親族から不満が出るケースもあるでしょう。まずはどんな方法で遺品を整理するかを、きちんと決定しておかなければなりません。
相続放棄でのトラブルも発生
実は、遺品や遺産の相続を放棄する際にもトラブルが発生する傾向にあります。相続放棄は法律的にも難しい部分があり、相続を放棄したと言っても相手が理解を示してくれないケース等があるからです。その点について詳しく解説していきます。
遺品整理後は相続放棄できない
相続放棄は原則、相続人に決定してから3カ月以内にすれば良いのですが、例外があります。それは、遺品整理後には相続放棄ができないということです。
これは、欲しい物だけをもらって他は放棄するというようなケースを防ぐ意図があります。財産の一部を処分すると、単純承認したとみなされ、相続放棄が不可能となることは覚えておきましょう。
遺品を相続するときは、価値のあるもの、マイナスのものもすべて相続しなければなりません。
賃貸物件の原状回復費用を請求された
故人が1人で住んでいた賃貸物件の原状回復や、滞納していた家賃について請求されるケースがあります。高齢者の親が孤独死したケースなどでは、特に多い事例のようです。
この場合は、相続放棄すれば原状回復の義務は発生しません。相続を放棄したことを不動産会社や大家に伝えることが大切です。
注意点として、上で挙げたように遺品を整理してしまうと相続放棄はできないので「部屋の遺品を早めに持って行って欲しい」と言われた場合でも、部屋には一切手を付けてはいけないことは覚えておいてください。
相続放棄しても管理義務は発生する
相続を放棄したとしても管理義務が残る場合があります。
民法940条には、相続を放棄したとしても、次に相続する人が現れるまで財産を適切に管理する義務があるのです。例えば、相続するはずだった家の壁が崩れて通行人に怪我をさせてしまうようなことが発生すると、相続を放棄していたとしても治療費を請求される可能性があります。
このような事態を回避するには、遺品や財産を管理してくれる『相続財産管理人』を選任することが必要です。その場合、管理義務が相続財産管理人に移行するため、上記のようなケースが発生しても、慰謝料や損害賠償を請求されることはなくなります。
トラブルを避ける方法とは?
今までに紹介したようなトラブルには誰しも遭いたくないものです。親族や身内との相続トラブルは、その後の付き合いにも大きな影響を及ぼすでしょう。
そうならないための予防策を紹介していきます。
相続人を確認し、遺品整理は相続人全員で
まず、誰が遺品や遺産の相続人になっているのかを確認する必要があります。
不動産が誰かとの共有名義になっている場合は、親族だけで不動産を処分することもできません。滅多にありえないケースですが、自分が知らない親族が発覚するような場合もあります。このような場合も相続人として認めなければなりません。
相続人の確認が取れたら、相続人全員で遺品整理を行ってください。これは特定の遺品の処分に対し、相続人全員で処分に納得するためです。ある相続人はそれをゴミとして処分しようとしても、別の相続人が価値ある財産と主張するかもしれません。
その場で遺品の処遇を決めることで、後々に揉めないようにする意味も含まれます。記録として残しておくのも良いでしょう。
遺産分割協議書を作成する
先ほど触れた記録の一環として、不動産や美術品、宝石といった遺品について、誰がどれを相続するのかを決定した『遺産分割協議書』を作成しましょう。
協議書に従って誰がどの遺品の所有権があるかを決定すれば、所有権を巡るトラブルになる可能性も少なくなります。この際、間違って他人の物を処分しないように注意が必要です。
弁護士に相談する
遺品の分配について決まらないようであれば、早めに弁護士に相談するという方法も検討しましょう。
弁護士は専門家です。遺品整理についての複雑な法的手続きを代行してくれます。トラブルが発生した場合も、法的根拠を元に解決策を提示してくれるはずです。
また、第三者として弁護士がいるということも、大きな意味があります。当事者同士の話し合いで決着がつかなくても、第三者による仲介であれば落ち着くこともありますし、まして弁護士の意見であれば耳を傾ける人も多いのではないでしょうか。
遺品整理業者についてのトラブルも増加
遺品整理については、資格をもつ専門の業者に任せるという手もありますが、実は、専門業者に頼んだ場合のトラブルも多発しているのです。
なぜかというと、許可無く営業している不法業者も多くあるためです。不法業者に片付けを依頼した場合にどんなトラブルになるのかをまずは見ていきましょう。
不法投棄
通常、回収した遺品は自治体が指定した施設へと運ばれます。しかし違法業者の場合、その回収許可が自治体から降りていないため、回収品を正規ルートでは処分できません。
そこで業者は、山中への不法投棄といった違法手段で処分しようとするのです。これらの所有権は業者に依頼した側にあるとみなされ、処分費用を請求されるケースもあります。
投棄場近辺に何かしらの被害があった場合は、賠償金を請求される危険もあるので、不法投棄をする業者は避けなければなりません。
法外な請求や安すぎる買取価格
遺品整理という状況は、そうはないものです。そのため明確に相場が定まっておらず、中には他の業者と比較して明らかに法外な費用を請求してくるようなケースがあります。
また、事前の見積もりと比較して、オプションを次々に追加していき、高額な費用を請求するケースや、頼んでもいないリフォームなどを進めてくるといった業者もあります。
こういった業者は買い取り価格についても信用できません。資産価値のある遺品でも安く叩こうとすることを平然とやってきますし、引き取ってくれる正規の業者もわからない場合、必然的に価格は安くなってしまいます。
遺品整理において、こういった業者は利用しないことが大切です。
不誠実な対応
悪徳業者の被害報告として、不誠実な対応をされたというのもよく耳にするケースです。
勝手に物を処分する、遺品を乱暴に扱うといった業者の対応は、生前の故人を知っている人から見れば好ましいものではありません。
また、事前にきちんと手順や残す物について説明していたにもかかわらず従わない業者や、事前の見積もりに疑問があるため聞いても、誠意のある回答をしてくれないというような事例もあります。
見積もりの段階で、回答が不誠実な業者については弾いてしまった方が良いでしょう。
信頼できる業者の選び方
遺品が大量にある場合や、整理する時間がない場合は、業者に頼らざるを得ません。その際、悪徳業者に引っかからないよう、信頼できる業者の選び方について解説します。
次の点を参考に、業者を選んでみてください。
必要な免許や資格を持っているか
先ほど不法投棄のケースを紹介しましたが、正規の業者であれば『一般廃棄物収集運搬業許可』を持っています。この資格を持っている業者は自治体からの認可を得ているので、ゴミが不法に捨てられることもありません。まずはこちらの資格を所有している業者を選んでください。
また、遺品の整理について、法的な知識や手順についてきちんと心得ている『遺品整理士』が業者の中にいれば、遺品整理はそれだけスムーズにできるようになるでしょう。ホームページを訪れると、この資格を持っている業者は多くいるようなので、こちらも確認することをおすすめします。
骨董品などの古い物が遺品にあるのなら、『古物商許可』を持っている業者を選ぶということも考えましょう。適正な価格で買い取ってくれるでしょう。
会社の実態と実績を確認
会社の実態と実績について把握しましょう。
まともな会社であれば、ホームページを訪問すればどのような業務を行っているかの事例を紹介しています。中には写真付きでビフォーアフター画像を出しているような業者もありますので、そういった実績については参考にしましょう。
良心的な会社は、価格についても明確に提示されていることが多く、問い合わせてもきちんとした答えが返ってきます。逆におかしな会社は電話番号だけの紹介や、宣伝文句が非常に抽象的だったり、資格や免許が確認できなかったりと、曖昧な点が非常に多い傾向にあるようです。
現在はインターネットで会社の名前を検索すれば、実際に利用した人の体験や感想も見ることができます。その会社について多くの情報を入手することが、優良業者を選ぶポイントです。
まとめ
遺品整理は、親族間や近しい人間でもトラブルになりやすいので、相続人の明確化と、相続人全員から合意の元で整理をすることが大切です。
遺産分割協議書を作成すれば、より円滑に遺品整理を進めることができるでしょう。どうしてもトラブルになりそうな場合、弁護士に相談するという方法もあります。
遺品が多く処分が困難な場合は、専門の業者に頼むという手もあります。悪徳業者にかからないように、資格の確認や実態の把握は前もって行っておくことが大切です。