高齢者の一人世帯では、死後のトラブルも不安の種です。残された家族に迷惑をかけたくないという人は、早めに死後の準備にとりかかってみてはいかがでしょうか。元気なうちに始めたい、生前整理や遺品整理の事前予約について紹介します。

孤独死は高齢の一人暮らしの大きな悩み

孤独死とは、誰にも看取られずにたった一人でひっそりと亡くなることです。多くの場合、自室内で孤独に亡くなるため看取る人がおらず、遺体の発見までに時間がかかります。

「人生の終わりの時をこのように淋しく迎えるのは不安」と感じている高齢者は多く、孤独死は近年注目を集める社会問題の1つです。

高齢化の進行と独居老人の増加

孤独死が増える原因として、日本社会の超高齢化が挙げられます。2025年には日本国民の1/3が65歳以上の高齢者になるといわれており、現在も高齢者だけの世帯が増加中です。さらに、高齢者ほど配偶者と死別して一人で暮らす割合が高くなり、老人の単身世帯も増える傾向にあります。

一人で暮らす高齢者が増えている以上、今後も孤独死が増加することは避けられないでしょう。

遺品の整理や処分への不安を持つ人も

他に頼る者のない高齢者の中には、『自分が死んだ後』を心配する人が多くみられます。子供はいるけれど別世帯で暮らしている場合、多くの人は「迷惑をかけたくない」「経済的な負担をかけたくない」と考えます。

また、身寄りがない人なら、自分が死んだ後に大切な家や物がどうなるのか不安に感じているでしょう。高齢者世帯では現在の生活に加え、自分が死んだ後のことも大きな不安の種となっているのです。

元気なうちに生前整理がおすすめ

配偶者のない一人世帯の高齢者なら、元気なうちに生前整理を行うことをおすすめします。生前整理とは、自分が生きているうちに『死後』を想定して、整理整頓を行うことです。物だけではなく動産・不動産、証券など財産管理も含まれるため、全てを整えるにはそれなりに時間がかかるでしょう。

早めに生前整理を行うと、どんなメリットがあるのでしょうか。

遺族の負担が軽くなる

生前整理のメリットは、自分の死後、遺族にかかる負担を軽減できることです。

人が亡くなった後は、残された遺族が遺品や財産の整理をします。故人が何の準備もせずに亡くなると、残された遺族が全ての物を管理・処分しなければなりません。当事者でなければ難しい『要・不要』の判断を強いられるため、肉体的・精神的にかかる負担はかなり大きくなるでしょう。

事前に物を減らし、処分の仕方を明確にしておけば、遺族も迷わず遺品整理に取り掛かれるのではないでしょうか。

その後の生活が身軽になる

生前整理のメリットのひとつに、不要な物を減らし、必要な物だけが残るという点があります。長く生きていれば不要な物が増え、シンプルに暮らしにくくなります。元気なうちに思い切って生前整理することで、不要な物を処分し、本当に大切な物だけを手元に残せるようになるのです。

必要な物だけを持ち不要な物がない暮らしは、身軽で快適です。余計な物に惑わされずに生きられるため、生活が充実し、自分らしい生活を送れるでしょう。

プライバシーを守ることができる

長い人生、人に見られたくない日記や写真はありませんか?準備もなく死んでしまった場合、隠しておきたいプライバシーも遺族に見られてしまうことになります。

生前整理のメリットの1つが、見られたくないもの・知られたくないものを自分で処分できるということです。自分の目で確認しながら物の処分を決められるため、必要な物だけを残しておけます。

勿論なかには、「すぐに処分はしたくないけれど、死後見られたくない」という物もあるでしょう。このような場合はデータ化したり鍵の閉まる箱等に収めておく方法があります。事前に「死後はデータを見ずに破棄してくれ」「箱を開けずに破棄してくれ」と頼んでおけば、内容を他の人に知られることもないでしょう。

ついでに住み替えもアリ

大勢の家族と住んでいた家にそのまま暮らしている場合、現在の暮らしに合った間取りに引っ越すのもよいかもしれません。

生前整理と引っ越しを合わせて行うメリットはあるのでしょうか。

最適なサイズの部屋で暮らす

「家が広すぎる」と感じた時は、暮らしに合った大きさの部屋に引っ越してみてはいかがでしょうか。部屋数の多い家は住む人が多ければよいですが、一人世帯では不便に感じることの方が多くなります。間取りが少なくコンパクトな部屋に住み替えて、物の管理や掃除を容易にしましょう。

また、世帯サイズにあった部屋に移ることで、固定資産税も安くなります。節税できたぶんは生活費や趣味などに回せるので、生活にも余裕が生まれるのではないでしょうか。

老後の生活が便利な土地に引越す

年を取ると、病院や買い物の場所が近いほど便利です。高齢になると歩くのが困難になったり、疲れやすくなったりするでしょう。そんな時、行きたい場所や買い物する場所が近くにあれば、困ることはありません。特に病院が近ければ、何かあっても安心できるでしょう。

また、近くに「行ける場所」が多いほど、外に出るチャンスが増え、気楽に外出できます。高齢者の一人暮らしは家にこもりがちになり、社会との関わりが薄くなる傾向が顕著です。外出する気持ちやチャンスがあれば、老いても生き生きとした暮らしを送れるでしょう。

遺品整理の事前予約も可能

遺品整理の事前予約とは、孤独死を心配する本人が、業者と契約をして遺品整理に関する細かな項目を取りまとめておくことです。孤独死が心配される昨今では、このようなサービスを利用して、事前に死後の準備を行う人が増えています。

遺品整理の事前予約にはどんなメリットがあるのでしょうか。

子供に迷惑をかけずにすむ

遺品整理の事前予約をしておけば、死後の遺品の分別や処分について、迷うことなく進めていけます。残された子供が遺品について悩むまなくてすむので、その後の整理は淡々と進められるでしょう。

遺品整理とひとくちに行っても内容は多岐にわたり、身の回り品の分類から、動産・不動産の整理までと、かかる手間は想像以上に大きなものです。遺産を引き継ぐ子供はこれら全てを行わねばならず、経済的・精神的負担を強いられることになるでしょう。

ところが、こうした遺品整理を事前に予約しておけば、子供が負担を背負う必要はありません。自分が死んだ後、「誰も困ることはない」と思えれば、不安を感じずに暮らしていけるでしょう。

身寄りがない場合でも安心

高齢者の一人世帯には、全く身寄りがない人もいます。このような人にとっては、「突然死んでしまったら遺品や財産はどうなるのか」「誰が処分してくれるのか」ということは、気がかりな問題です。

ところが遺品整理の事前予約では、遺品に関することを細かく指定できます。残された家財道具の処分方法や決済方法まで決められるので、突然『その時』が来ても安心です。

自分の死後のことを全て段取りできるのは、「誰にも迷惑をかけたくない」と思っている人には、頼れるサービスとなるでしょう。

不要物から貴重品までの処分も対応

遺品整理の事前予約では、不用品や貴重品の取り扱いについても、業者ときちんと相談できます。不要な品物はその業者が引き取り・処分してくれるので、他の業者を介する必要がなく、手間もかかりません。

手間がかからないとはいえ、「遺品を適当に処理されてしまうのでは」と不安に思う人もいるでしょう。しかし、こうした遺品整理専門の業者には、『遺品整理士』が在籍しているはずです。遺品整理士はいわば遺品整理のプロなので、大切な品を適当に処分される心配はないでしょう。

貴重品・不要品は正しく選別され、必要があれば買取にも応じてくれます。処分について希望がある場合はその旨を伝えておくこともできるので、「遺品がどうなるか」という心配は軽減されるでしょう。

まとめ

高齢者の一人世帯では、誰もが孤独死してしまう恐れがあります。自分の死後に負担をかけたくない、身の回り品がどうなるか心配という人は、元気なうちに生前整理を行って、自分や残される家族の負担を軽くしておくことをおすすめします。

また、生前整理が間に合わない等の心配がある人は、あらかじめ業者に遺品整理の事前予約をしておくと安心です。

生前整理にせよ遺品整理の事前予約にせよ、自分が生きているうちに死後のことを段取りできるというメリットがあります。できれば早めにとりかかり、身辺をすっきりさせておきましょう。そうすれば、その後の不安が軽減し、快適な生活を送れるのではないでしょうか。