人が亡くなった後には、通夜や葬儀だけでなく故人の遺した遺品を整理するという作業が待っています。思いが詰まった物品が多いため、処分するだけでなく供養を行う人も多いと言われています。遺品供養の方法や注意点、依頼先を紹介します。

遺品整理の基礎知識

いざ遺品整理に取りかかろうとすると、想像していた以上に多い遺品の量に戸惑う人は少なくありません。棺に入れられる物には限界があり、形見も他人に委ねられるものばかりではないからです。

日本では古くから『物には魂が宿る』と考えられており、遺品をゴミのような感覚で捨てるのは忍びない気持ちになるという人が多いのもうなずけます。

そのうえ遺品の中で、財産価値のあるものには相続が発生するため、処分には注意が必要です。いざというときに慌てないためにも、遺品整理の基礎を学んでおきましょう。

目安は49日

遺品整理を始める時期に特別な決まりはありませんが、仏教徒の多い日本では49日(しじゅうくにち)を目安にして遺品整理を始める人が多いと言われています。

49日は『満中陰(まんちゅういん)』とも呼ばれ、故人の魂がこの世から離れていくと考えられている日数のことです。親戚などを集めて法要を行う場合が多いので、集まった人と遺品について話し合う機会をここにもってくるのもいいでしょう。

神式では神霊祭の50日祭や30日祭、キリスト教ではカトリックは追悼ミサ、プロテスタントは記念集会がそれにあたります。

しかし、故人が一人暮らしで賃貸物件に住んでいた場合には、まず先に退去手続きをしなければなりません。その場合、早めの遺品整理あるいは遺品の移動が必要になってきます。

遺品供養とは

他人に引きついだり、家の中に保管し続けたりすることは難しいと感じても、遺品を『単なる物』として事務的に処分するのは心苦しいものです。そんな遺族の思いをくみ取りながら、『供養』の要素を取り入れた遺品整理の方法が遺品供養なのです。

不用品処分業者や便利屋ではなく、寺社や遺品整理専門の業者に依頼することは、遺品整理をしながら宗教的な『供養の儀式』も同時に行えるという特徴があります。

形見分けとは

形見分けは、世界中でみられる慣習です。故人の愛用していた時計やアクセサリー、万年筆、家具や趣味のコレクション品などを、親族や親交の深かった友人に故人の記念の品として受け継いでもらうことです。

この形見分けも49日を目安に行われることが多いのですが、貴金属類や価値のある骨董、車や不動産などは相続トラブルの原因になりやすいため、注意が必要です。

銀行通帳やクレジットカード、キャッシュカード、印鑑、有価証券や契約書なども貴重品として扱う必要があります。遺産分割を終えてからの形見分けをおすすめします。

その上で故人の遺言書がある場合にはそれに従い、遺言書がない場合には平等に分配できるようにしておくとよいでしょう。

遺品供養の方法

遺品供養は、故人の遺品を単なるモノとして扱うのではなく、供養という宗教的な儀式をして、故人や残された人の気持ちを穏やかにしながら遺品とお別れする方法です。

遺品供養の1つに『お焚き上げ』があります。寺院にお願いして執り行うものや、遺品整理業者に依頼するものがあります。

寺社でお焚き上げをしてもらう

煩悩や悪いものは炎の力で清められ、天上に返すことができるとされている密教の護摩業(ごまぎょう)や、小正月(こしょうがつ=1月15日)に行われるどんど焼きが源流と言われる『お焚き上げ』は、神聖な火で燃やすことで『遺品を浄化する』と考えられている方法です。

遺品だけでなく故人や遺された人たちの『心』も安心できる処分方法なのです。そんなお焚き上げは、古くは江戸時代からあったと言われ、故人を供養するために寺で着物などを焼いていたとされており、今も全国各地で行われています。

引き受け可能なものか事前に確認する

神社仏閣でのお焚き上げは、人形供養専門のところもあれば、さまざまな物を遺品供養してくれるところもあり、その内容は寺社によって異なります。

お焚き上げは火で燃やして行われるため、燃えないもの、ガラス製品や陶器、電化製品などは引き受けてもらえないのが基本です。事前に問い合わせることをおすすめします。また、危険物や生ものはお焚き上げに限らず、引き受けることはできません。

遺品整理業者に依頼する

菩提寺から遠く離れて暮らしている人や、遺品の量が多さに困っている人、片付けを急ぎたい場合などは、寺社にお焚き上げを頼む選択だけでなく、遺品整理業者に依頼するという方法もおすすめです。

近年の終活ブームの影響もあり、遺品整理をする人が増えています。急激に伸びている遺品整理業界ではありますが、その分業務内容に問題のある業者も少なくありません。しっかりとした業者を選ぶことが大切です。

依頼先の選び方

遺品供養をしようと決めたら、まずは依頼先を選びましょう。その依頼先には大きく分けて寺社と業者の2つが挙げられます。

寺社か業者か

元々お付き合いのあるお寺などに遺品供養についての相談をすることは、比較的自然な流れと言えます。菩提寺がある人は、遺品供養をしてもらえるかどうか問い合わせてみるとよいでしょう。

また宗派や檀家かどうかは関係なく、遺品供養を受け付けている寺社があります。ホームページを開設していて料金も明瞭であり、遺品を宅配便で送るなどの方法で遺品供養を行っている寺社であれば利用しやすいですね。

そしてもう1つの選択肢として、遺品整理業者があります。その際にはまず、その業者が優良かどうかを確認してから申し込むように注意したいものです。

業者に依頼する場合の注意点

高齢化社会の影響で、遺品整理業者はさらに増え続け、その需要は他業種に大幅な差をつけて伸び続けています。しかし残念ながらその分、悪質な業者が紛れ込んでいる確率も高くなり、遺品整理に関してのトラブルが多いのも事実です。

遺品整理をするタイミングによっては時間がなくて、とにかく早く処分してもらおうと焦るケースもあります。そうなると後々トラブルにつながりかねません。できるかぎり信頼できる業者を探すことが大切です。

対応や資格をチェック

遺品整理業者を選ぶ際には、持っている資格を確認しましょう。不用品回収業許可や産業廃棄物収集運搬許可だけではなく、『一般廃棄物収集運搬許可証』という資格を持っている業者であるかどうかをまずチェックすることです。

また『遺品整理士』の資格を持った人が作業に携わる業者かどうかも大切です。遺品には特別な思い入れがあるため、ただの不用品として乱雑に扱われることを避けるために、重要なポイントと言えるでしょう。

そして業者の人となりを見るためには、電話や訪問で見積もりをしてみるのもよいでしょう。少しでもおかしいとか対応に不満を感じたら、その業者を使うべきではありません。

見積もりを明確にすること

遺品整理業者が増えてくると、システムや料金が不透明になっていたり、見積もりと実際の料金が大幅に違っていたりと悪質な業者も出てきます。

実際に遺品整理でのトラブルは少なくありません。トラブルに巻き込まれないためには優良な業者を見極めることが大切です。大手企業がすべて安心というわけではありませんが、個人でトラックなどで巡回していたり、個別に訪問して営業してくる業者には注意が必要です。

無料で見積もりをしてもらえる業者を、1社だけでなく、数社を比較してみることをおすすめします。ホームページなどでの情報開示や業務メニュー、料金などを明瞭にしていることが最低条件です。

遺品整理士などの資格や協会について

近年耳にすることの多くなった『遺品整理士』と言う資格ですが、実際にはどのようなものなのでしょう。『遺品供養士』との違いも合わせて、資格を取るための協会についても紹介します。

遺品整理士とは

遺品整理士は正しいやり方で、遺品整理ができる資格を持った人のことです。遺品の取り扱いというのは複雑で、取り扱いの手順にも独自のやり方があります。そして遺品整理とは切り離すことのできない、遺品整理に関わる法規制などの知識も身に着ける必要があります。

遺品整理によって出た不用品の処分やリサイクルの手続き、遺産価値のある遺品の違いなどをしっかりと学んだ『遺品整理のプロフェッショナル』が遺品整理士なのです。

遺品整理士認定協会

遺品整理士になるには、一般社団法人『遺品整理士認定協会』が運営する民間の資格試験に合格し、認定される必要があります。誰でも受験資格があり、通信講座によって行われます。

ウェブや電話で申し込むと教本・資料・問題集・DVDが届き、2ヵ月間を目安に受講します。受講の最終段階で郵送またはWEBからレポートを提出し、そのレポートの内容によって合否が決まります。合格通知が届いたら、認定手続きをしたのち『遺品整理士』となれるのです。

遺品整理士認定協会

遺品供養士とは

遺品供養士は、供養に関することはもちろん遺品整理や生前整理、グリーフケアと呼ばれる遺族のメンタル面のケア、環境や福祉まで幅広い知識を身に着けたという証の資格です。

『2級・1級・コンシェルジュ』の3つの資格があり、葬儀社、遺品整理業、便利屋、ハウスクリーニング業などの関連業者を始め、一般の人から僧侶、宮司までが検定を受講する専門性の高いものになります。

遺品供養カルチャー協会

遺品供養士になるためには、『一般社団法人遺品供養カルチャー協会』の主催する講座を受講する必要があります。講座は日本全国さまざまな場所で検定が受けられるようになっており、2級では約6時間の講習の後に筆記試験となります。

1級は2級の資格を取得していることや、事前に面接やレポート提出という条件をクリアののち、2日間各6時間の講習後に筆記試験となります。

さらにその上の『遺品供養コンシェルジュ』は遺品供養士を育てる講師になるための資格です。遺品供養士1級の資格を取得した会員であり、遺品供養カルチャー協会主催の勉強会に2回以上出席したことのある人に、受験資格が与えられます。

遺品供養カルチャー協会

遺品整理の際の注意点

遺品整理を行う上で、寺社や業者に依頼する前に知っておきたい大切な注意点があります。

遺言書の確認をしよう

故人が遺言書を遺しているかどうかを必ず確認しましょう。何よりも先に探してください。遺言書は故人の意志が書かれている『法的効力』を持った書類だからです。

遺言書があることを生前伝えられている場合だけでなく、家の中を片付けているうちに出てきた遺言書やノートの切れ端や箸袋の裏などに書かれたものでも遺言書として有効なものもあるので注意が必要です。

遺言書がある場合には内容に従い、ない場合には遺族や親族などで遺品についてどうするのかを話し合うことになります。

日程や仕分けなど遺族間の同意がポイント

遺品整理は遺族全体でコミュニケーションを取ることが欠かせない作業です。遺言書があるなら、その通りに遺品を整理することが基本ではありますが、その旨をきちんと伝えて確認・相談することや、遺言書が無い場合には遺族間で話し合いをして、同意のもとに行います。

大人が日程を合わせて集まるのは難しい場合もありますが、基本的にはかならず連絡を取ることです。電話や手紙などでもいいので、遺品整理についての確認をとりましょう。言った言わないのトラブルは避けて、できるだけ円満に進めていきたいものです。

主なお焚き上げの依頼先

形見分けをしたり、リサイクルした遺品以外にも、多くの遺品が残ることがあります。しかしただ不要品として処分するにはしのびない、辛い気持ちになるという場合には『お焚き上げ』という方法があります。

寺社との付き合いがないけれど、お焚き上げの専門家にしっかり供養してほしいという人におすすめの2社を紹介します。

結城諏訪神社

茨城県にある『結城諏訪神社』は受験やスポーツ、仕事など人生の勝負事、諸難突破にご利益があることで有名な神社ですが、人形やもの供養を行っていることでも知られています。

そして、その引き受け範囲はとても広く、電化製品や携帯電話までも含まれます。『危険物・違法物・遺骨以外のものならすべてOK』なのが結城諏訪神社なのです。

全国からの遺品供養に対応しており、供養物と玉串料(※)を一緒に箱詰めしたものを宅急便で送るだけです。その後お焚き上げが行われ、希望者にはお焚き上げ後の通知もしてくれます。

(※)玉串料(たまぐしりょう):神道において神社や神官に対して贈る謝礼のこと。振込も可能

結城諏訪神社

MISお焚き上げステーション

北海道千歳市に位置する『MISお焚き上げステーション』は、大自然の中で僧侶による遺品供養をする会社です。

仏壇・神棚・寝具や衣類などの布製品、人形や写真などの思い出の品全般、これまで不可能だと言われてきた携帯電話やPC、DVD、CDなどの『情報機器』もデータの消去まで済ませ、個人情報を守ったうえで独自の方法でお焚き上げできるので安心です。

まずはメールか電話で問い合わせて、遺品供養の相談をしてみましょう。遺品供養が決まったら宅配便や小包、直接の持ち込みなどの方法で依頼します。遺品供養後には『遺品供養証明書』と写真を送ってもらえます。

MISお焚き上げステーション

主な遺品整理業者

遺品整理をしようとしたら思いのほか量が多かったり、故人の住居の不要品整理も一緒に行う場合などは、遺品整理業者が便利です。以下に遺品整理士が在籍していて遺品整理を行える業者を紹介します。

東京都内なら遺品整理プログレス

『遺品整理プログレス』は東京全域の遺品整理を請け負っています。テレビ1台から家一軒まるごとまで対応できるプログレスの遺品整理は、当日見積もり、当日遺品搬出も可能です。

多くの人が頭を悩ます、遺品の形見分けや面倒な手続きの代行も行っているのも助かりますね。急ぎの場合は、HPの簡単見積もりフォームからの問い合わせもできます。

東京都内なら遺品整理プログレス

関東一円に対応のプロアシスト東日本

千葉県茂原市にあるプロアシスト東日本は、関東全域の遺品整理を始め、特殊清掃も行う会社です。遺品整理業者を使うのが初めてで不安…という人にも『遺品整理士』が作業するので安心です。

片づけ業者などに遺品整理を依頼すると、貴重品の取り扱いは依頼者側に委ねられるため、『作業前に貴重品は取り除いておいてください』と言われるケースがほとんどです。

プロアシストなら、作業を『貴重品探し』から始めてくれるので、家族が整理しきれない、見つけられなかった貴重品が出てくることが多いのです。片づけのみを行う業者にはないこうしたサービスが魅力です。

関東一円に対応のプロアシスト東日本

愛知、岐阜を中心に対応 GOOD SERVICE

愛知や岐阜エリアの遺品整理や生前整理なら、地域密着型で安心価格のGOOD SERVICEがおすすめです。毎月多数の遺品整理を行っており、遺品整理士が依頼者のペースに合わせた丁寧な作業を行います。

まずは電話やメールで相談をして、打ち合わせをしたのちに現地見積もりの日程を決めます。プラン設定も、依頼者と一緒に実際に遺品を確認して話し合いながら進めていきます。急ぎの遺品整理や電話での即日見積もりにも応じています。

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大阪なら遺品整理プログレス

全国各地に支店を持つ『遺品整理プログレス』の大阪支店です。大阪全域の遺品整理を1点から受け付けています。故人が遺した大切にしていた物の処分が心苦しい…という依頼者に代わり、提携寺院にて僧侶がお札とともにお焚き上げをしてきちんと供養します。

供養は僧侶を自宅に招いて行うものと、共用施設にて共同供養の2種類があります。無料見積もり訪問も行っていますので、まずは相談してみませんか?

大阪なら遺品整理プログレス

まとめ

遺品整理をするときには、『供養をする』ことも視野に入れて寺社や業者を選ぶ人が増えています。遺品を単なる不用品として事務的に捨ててしまうのではなく、故人の気持ちになって供養して処分することで、遺族の心も浄化されていくのでしょう…。忙しい時代だからこそ、遺品供養はおすすめの遺品整理の方法なのです。